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2017年10月28日

第34回日本障害者歯科学会学術大会開催

「障害者の歯科保健医療と生活支援」をテーマに

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 さる10月28日(土)、29日(日)の両日、福岡国際会議場(福岡県)において、第34回日本障害者歯科学会総会および学術大会(柿木保明大会長、福田 理理事長)が「障害者の歯科保健医療と生活支援」をテーマに開催された。歯科医師、歯科衛生士ら2,500名を超える参加者が集まり、盛会となった。

 初日午前中の会長講演では、柿木保明氏(九歯大教授)が「闘病経験からみた口腔ケアと摂食機能のリハビリテーション」の題で登壇し、闘病中に自らが患者として受けた身体や口腔のケアについてざっくばらんに語った。特に、氏の専門でもある歯科東洋医学の知識が闘病生活をおおいに助けたとし、漢方の処方からストレスの予防法まで多岐にわたり解説がなされた。
 
 午後は、シンポジウム1「障害者歯科におけるこれからの歯科衛生士の役割」が、石井里加子氏(九州看護福祉大教授・歯科衛生士)、有友たかね氏(日歯大口腔リハビリテーション多摩クリニック・歯科衛生士)両座長のもと行われた。まず、二次医療機関からは田島理矢子氏(一般社団法人名古屋市歯科医師会名古屋南歯科保健医療センター)、病院からは二宮静香氏(医療法人博仁会福岡リハビリテーション病院歯科)、在宅医療現場からは渡邉理沙氏(愛知県歯科衛生士会)、教育現場からは森下志穂氏(名古屋医健スポーツ専門学校歯科衛生科)の4名の歯科衛生士が、それぞれの現場における歯科衛生士の役割を紹介し、さらにより高い専門性を発揮するために求められる能力や働き方について展望が述べられた。ディスカッションでは、会場から数多くの質問が挙がり白熱した議論がなされた。特に歯科衛生課程について、日常臨床に定着させるための卒前・卒後教育の機会や、指導する側の歯科衛生士への研修の必要性などといった現場の切実な要望が挙げられた。

 2日目の教育講演「障害者の歯科口腔疾患に対する予防と診療」では、緒方克也氏(九歯大臨床教授)が登壇。まず1970年代から現在に至るまでの障害者歯科診療の変遷を整理し、脳室周囲白質軟化症や発達障害などのいま注目されている障害について解説。次に、近年では権利擁護としての障害者歯科診療が求められているとし、これまでは修復治療が中心であったが、国民誰もが有する健康である権利を鑑みれば、健常者と同じように口腔内を清潔に保つ、う蝕や歯周病を予防するなどの継続的な管理へ診療内容をシフトしていくべきであると述べた。また、障害児のう蝕罹患率は経年的に低下傾向にあるものの就学後の罹患率に大きな変化がないことからも、就学・成人後までの継続管理の必要性を訴えた。そのなかで、待ちの医療から出かける医療へ、医学的モデルから社会的モデルへの転換という障害者福祉の視点が求められると締めくくった。

 このほか、特別講演、会長講演、シンポジウム3題、教育講座4題、アジア障害者歯科学会キックオフシンポジウム、市民公開講座、ランチョンセミナー、一般演題(口演発表、ポスター発表)など多数のプログラムが展開された。

 なお、次回はきたる2018年11月17日(土)と18日(日)の2日間、中野サンプラザ(東京都)において、山内幸司大会長のもと開催予定。