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2018年2月18日

日本デジタル歯科学会、平成29年度冬季セミナーを開催

「CAD/CAM冠に期待される保険適用拡大!」をテーマに

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 さる2月18日(日)、東京医科歯科大学 歯科棟南4階特別講堂(東京都)において、日本デジタル歯科学会(末瀬一彦理事長)による平成29年度冬季セミナーが開催された。本セミナーは、例年春季に開催されている同学会の学術大会に加え、夏季や冬季に最新の話題を取り入れて行われているもの。今回はとくに、2017年12月にCAD/CAM冠の下顎第一大臼歯への保険適用がなされたこともあってか注目度も高く、全国各地から100名あまりの参加者が参集する盛況となった。以下に、各演題の演題および概要について示す。

1)「CAD/CAM冠大臼歯保険適応 ―経緯と課題―」(熊谷知弘氏、日本歯科材料工業協同組合CAD/CAM冠規格基準ワーキンググループ議長)
 本演題では、2014年に小臼歯における保険適応がなされたCAD/CAM冠につき、その後破折や脱離といったトラブルが発生したことを受け、将来的な大臼歯への適応も見据えて日本歯科材料工業協同組合(以下、日歯材工協)が自主的に制定した団体規格である「CAD/CAM冠用歯科切削加工用レジン材料(JDMAS 245:2017)」についてまず紹介。2014年当時のCAD/CAM冠用歯科切削加工用レジン材料にはフィラーの含有量などが定められているだけで、強度などに関する詳細な規定はなかったため、その点を定めたものであると述べた。また、2017年12月の、CAD/CAM冠の大臼歯への保険適応についてもその経緯を詳説。2017年7月に、日本歯科医師会から日歯材工協にCAD/CAM冠の大臼歯への保険適応をC2申請で期中に行うよう要請があり、組合内でその当時すでに所定の要件を満たす製品を持っていたジーシー社が初の認証を受けたとした(現在は同社に加え、クラレノリタケデンタル社、YAMAKIN社、そしてトクヤマデンタル社の製品が認証されている)。また、これらの大臼歯への適応にあたってはより厳しい品質管理が必要であることから、日歯材工協では独自の認定シールを用意し、さらに年に1回のピックアップ検査を行うことで品質を担保していきたいとした。そして今後の展望としては、適応症拡大に向けた各学会との緊密な連携と、エビデンスの蓄積に努めたいとした。

2)「CAD/CAM冠用レジンブロックの物性評価」(高橋英和氏、医歯大大学院医歯学総合研究科口腔機材開発光学分野)
 本演題では、CAD/CAM冠用レジンブロックの評価にかかわるフィラー含有量とそのサイズ、圧縮強さ、引張り強さ、曲げ強さ、破壊の様相(静的破壊と動的破壊)、摩耗と摩耗試験、着色度、吸水度、溶解量などそれぞれについて詳説。その上で、今後のさらなる強度向上のためには、(1)マトリックスレジンの強度向上、(2)フィラーの含有量の増量、(3)フィラーのサイズの増大とコントロール、そして(4)フィラーに用いるシランカップリング剤の性能向上、の4点を挙げた。その上で総括として、日本発の大臼歯に応用可能なCAD/CAMコンポジットレジンが育つことを願っている、とした。

3)「CAD/CAM冠大臼歯適用の留意点」(疋田一洋氏、北海道医療大歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野)
 本演題ではまず、CAD/CAM冠の患者の心理に与える影響について解説。保険診療で白くできる歯が増えることは患者の「次のニーズ」の喚起につながり、歯科界の活性化につながるとした。また、その一方でクリアランスが確保できない場合などCAD/CAM冠が適さない症例も存在するため、慎重な対応が必要であるとした。
 また、CAD/CAM冠に脱離が生じやすい理由としては、Duan Y、Griggs JAによる論文「Effect of elasticity on stress distribution in CAD/CAM dental crowns: Glass ceramic vs. polymer-matrix composite」(J Dent 2015; 43(6): 742-749)の内容を基に解説。本論文によれば、セラミッククラウンでは応力が局所に集中するために破折が生じやすいが、レジンではクラウン全体に応力が分散してたわみが生じるとのことで、こうした理由からレジン製のクラウンは脱離を生じやすいとした。また、その脱離を防ぐためには確実な接着が必要という趣旨で、Watanabe Hらによる論文「Efficiency of dual-cured resin cement polymerization induced by high-intensity LED curing units through ceramic material」(Oper Dent 2015; 40(2):153-162)を紹介。本論文は4種類の厚みをもつセラミック板を介して光重合型のレジンセメントを重合させた場合のヌープ硬度を調べたもので、光の到達が悪い場合には相応の硬度しか得られないことを示し、臨床においては隣接面など光到達性が不良になる部位もあるため確実な歯面処理とクラウン内面の処理を行った上での接着が必要であることを訴えた。そして総括として、大臼歯CAD/CAM冠の装着には(1)接着面の増加、(2)可及的な逆屋根形成、(3)咬合圧は小臼歯の1.5倍であることを意識する、(4)CAD/CAM冠に対するよりも支台歯への接着を重視する、そして(5)支台歯への確実なプライマー処理、の5点が重要であるとした。

 また、会場では3氏の講演のほか、メーカー講演として上野貴之氏(ジーシー)、山添正稔氏(YAMAKIN)、中屋敷 崇氏(クラレノリタケデンタル)の3氏も登壇。各社の大臼歯適応製品について、その開発の経緯やメリットについて存分に紹介していた。