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2018年8月4日

第36回日本ヒト細胞学会学術集会開催

歯の細胞のもつ再生医療への可能性が注目を集める

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 さる8月4日(土)、5日(日)の両日、日本歯科大学生命歯学部富士見ホール(東京都)において、第36回日本ヒト細胞学会学術集会(四ノ宮成祥理事長、中原 貴学術集会会長)が医師や歯科医師をはじめ約250名を集めて盛大に開催された。

 近年、口腔の問題が全身の健康と密接に関連することが科学的に明らかになってきている。これを受け、医療における歯・口腔の重要性を医科と歯科で再認識するために、本学術集会は「生命科学をになう医科と歯科の融合」をメインテーマに、40年近い同学会史上で初めて「歯科」が主催することとなった。

 初日午後の会長講演では、本学術集会会長の中原 貴氏(日歯大副学長・生命歯学部教授)が登壇。「歯科がになう再生医療の未来~歯の細胞バンクによる医療インフラをめざして~」の演題で講演した。中原氏の研究チームは、歯科発の再生医療として、歯髄などに由来する歯性幹細胞を研究している。歯性幹細胞は、骨髄由来の幹細胞よりも高い増殖能と、それと同等の多分化能を有しながら、がん化・腫瘍化のリスクが低い。また、通常の歯科治療で抜去した歯から細胞を採取するため、患者に二次的な侵襲をともなわない。

 こうした利点から、日本歯科大学では、2015年から「歯の細胞バンク」事業を開始。将来の再生医療に歯性幹細胞を提供することを目的に、認定歯科医院を通じ、患者の抜去歯を集め細胞を抽出、培養して凍結保存している。中原氏は「生命歯学」の実践として、歯科はすでに臨床応用のステージにあり、ますます加速していくだろうと述べたうえで、「研究者、最前線にいる臨床家、そして患者が中心となり再生医療を進めて行く」とまとめた。

 このほか、歯周組織再生剤「リグロス®」の開発者である村上伸也氏(阪大大学院教授)による特別講演「歯科再生医療の近未来を俯瞰する」や、歯髄由来幹細胞を肝臓の再生に用いる研究をしている八重垣 健氏(日歯大教授)の講演「ヒト歯髄由来・再生肝臓細胞のヒト移植に向けた前臨床研究」をはじめ、再生医療において歯科のプレゼンスを示す発表が多数行われた。これからの歯科の可能性は、歯と口腔だけにとどまらないことを感じさせる学術集会であった。

 次回、第37回日本ヒト細胞学会学術集会は、「ヒト細胞を取り巻く環境への挑戦―炎症・免疫・ホルモン―」をメインテーマに、きたる2019年10月19日(土)、20日(日)に杏林大学井之頭キャンパス(東京都)において開催される予定。