2019年10月20日掲載

小児期の成長発育や咬合誘導について示唆に富んだ講演が展開される

日本大学歯学部同窓会生涯研修2019 講演会開催

日本大学歯学部同窓会生涯研修2019 講演会開催
 さる10月20日(日)、日本大学歯学部創設百周年記念講堂(東京都)において、日本大学歯学部同窓会生涯研修2019 講演会「不正咬合の“芽”はどのように見つけるの?―咬合誘導から始まる生涯メインテナンス―」が、関崎和夫氏(新潟県開業)を講師に迎え、盛大に開催された。

 関崎氏はまず、カリエスフリーの小児が全国的に増えていることを、データを用いて提示し、小さな子どもをもつ家庭の関心は歯並びに移行してきていると述べた。また同時に、狭義の咬合誘導を、「不正咬合の早期発見・早期治療により正常な永久歯咬合を導こうとするさまざまな手段である」と位置づけた。

 続いて関崎氏は、豊富な症例を供覧しながら、自身が不正咬合の“芽”をどのように早期発見し、咬合誘導、さらには矯正治療を行っているかを紹介。少数歯反対咬合に対して、切歯交換期に被蓋を変えることで対応した症例、舌壁により開咬を生じている患者の治療例、臼歯部交叉咬合の治療例、また切歯交換期での見極めが難しく、咬合誘導においても特に難易度が高いとされる叢生の症例などを紹介した。さらに、切歯交換期ではさまざまな不正咬合が出現するが、この段階では不正咬合の“芽”はだいぶ“発芽”していると述べ、咬合誘導によって可及的早期に正しい方向に導くことが大切であることを強調した。また、下顎拡大の最適時期と限界点・注意点などについてもていねいに解説した。

 さらに氏は、床矯正装置で無理な拡大を行ったことで交叉咬合となってしまった症例などを供覧しながら、安易な拡大・非抜歯治療はけっして行ってはならないと警鐘を鳴らした。そして、一般開業医が咬合誘導を行う際の注意点として、すべてのケースを床矯正、あるいは非抜歯・拡大治療で治せない旨を知ること、少なくともスタンダードエッジワイズ法の基礎を学んでから行うこと、自身が矯正専門医でないことを自覚し、自身の技量にあった症例の難易度を見極めること、初めて咬合誘導を行う場合は矯正専門医の指導の下で行うこと、もしものトラブルの際、バックアップできる矯正専門医を身近に置くことなどを挙げた。

 そして、切歯交換期から始める矯正については、治療が長期にわたるという欠点がある一方で、う蝕予防と並行して定期管理を行うことにより、健全な咬合をもった永久歯列への誘導が可能であると述べた。また講演の中では、27年にわたる長期症例も紹介しながら、成長発育期の診断・治療が、生涯メインテナンスにとって重要である旨も強調した。

 講演後の質疑応答では、多くの質問に対して関崎氏が1つ1つていねいに答える姿が見受けられた。咬合誘導の利点だけでなく、その注意点や限界点などにも忌憚なく言及した関崎氏の充実した内容の講演に対し、会場からは惜しみない拍手が送られ、終始盛会となった。

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