2023年7月9日掲載

「新たなる歯内療法への幕開け」をテーマに

第44回日本歯内療法学会学術大会開催

第44回日本歯内療法学会学術大会開催
 さる7月8日(土)、9日(日)の両日、昭和大学上條記念館(東京都)において、第44回日本歯内療法学会学術大会(鈴木規元会長、浦羽真太郎実行委員長、佐久間克哉理事長)が開催された。

 1日目には、Sin-Young Kim氏(韓国・カトリック大学ソウル聖母病院)によるKAE招待講演「Biocompatibility and Osteogenic Potential of Hydraulic Calcium Silicate Cements Combined with Enamel Matrix Derivatives」、興地隆史氏(医歯大教授)による特別講演「新たなる歯内療法への幕開け―歯髄保存を考える」が行われた。

 2日目には、鈴木氏(昭和大教授)の座長のもと、シンポジウム「歯根破折を再考する」が行われ、澤田則宏氏(東京都開業)、駒田 亘氏(医歯大准教授)、菅谷 勉氏(北大教授)らが登壇し、八幡祥生氏(東北大准教授)によるデンツプライシロナ賞受賞講演「金属材料学の視点で捉えるニッケルチタンファイル」が行われた。そのほかにもポスター討論、ランチョンセミナー、テーブルクリニック、一般口演、企業展示などが2日間にわたり行われた。
 
 2日目に行われたシンポジウム「歯根破折を再考する」では、まず澤田氏が「歯根破折への対応とその予後」と題して歯内療法専門医の目線から解説した。診断では抜歯だが患者の希望で保存を試みたケースを多数供覧し、多くのケースで予後不良であることを再確認した。一方で良好なケースもあるが、その違いについてはまだわかっていないことが多いとした。続く駒田氏は、「残存歯質保護を考慮した支台築造」と題して登壇した。グラスファイバーポストは近年頻用されているが、歯根破折や二次う蝕などのトラブルが生じないわけではないとし、破折予防の観点からは築造法の良し悪しに関して明確にいえないとした。そこで氏は根管処置歯の歯質を保護するためには、レジンによる歯質補強が有効になり得るなどといった見解を示した。最後に菅谷氏が、「垂直破折歯根の接着療法と長期予後」の演題で登壇。歯周組織が破壊されるメカニズムや破折に対しての治療法、長期症例の予後と悪化因子などを解説した。なかでも治療の基本的な考え方として感染除去、破折間隙封鎖などをあげ、破折間隙封鎖の方法である口腔内接着法や口腔外接着法について詳説した。

 メイン会場では、席がほとんど埋まるほど聴衆が押し寄せ、講演の間には久々の現地での交流を楽しむ姿が散見された。

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