2023年7月15日掲載

「デジタル時代の歯科医学教育を考える」をテーマに

第42回日本歯科医学教育学会学術大会開催

第42回日本歯科医学教育学会学術大会開催
 さる7月15日(土)、16日(日)の2日間、一般社団法人日本歯科医学教育学会第42回学術大会(高橋 裕大会長、秋山仁志理事長)が、福岡歯科大学(福岡県)を会場にWebによるライブ配信にて開催された。

 特別講演「歯学教育におけるDXについて」では、堀岡伸彦氏(文部科学省高等教育局医学教育課企画官、医師)が登壇。政府が推進する医療分野におけるデジタル化は医療機器の分野にも影響を与えており、なかでも、本邦ではデジタル技術による診断・治療を支援するソフトウエアとその記録媒体を活用するプログラム医療機器の開発・推進に力を入れていることを解説。令和6年度から実施される歯科医師を養成する歯学教育の次期モデル・コアカリキュラムにおいても、「情報・科学技術を活かす能力」の項目が新設され、デジタル技術を歯科医療に応用できる人材の養成が重視されることを紹介。さらに、垣根を超えた医療全般に役立つようなプログラム医療機器の開発にも歯科医師の活躍が期待されるとの見解を語り、医療分野のデジタル化に貢献する歯科医師の育成が不可欠と述べた。

 シンポジウム1「デジタル・デンティストリーの臨床と教育」では、まず「歯内療法領域におけるデジタル・デンティストリーと教育」と題して、松崎英津子氏(福歯大教授)が講演。エンド領域での例として、治療用ガイドを用いたMIアクセス窩洞形成や、インプラント治療におけるguided surgeryを歯根尖切除術に応用したguided endodontic surgeryの手法など、エンド領域での応用を紹介するとともに、3Dによる見える化を学生教育に応用することで、術式理解や学習効果の向上が得られているとの有用性を報告した。

 続いて「口腔インプラント学分野でのデジタル・デンティストリーの臨床と教育について」と題し、谷口祐介氏(福歯大講師)が登壇。口腔インプラントの授業において、今年度より光学印象用コーピングを装着し、口腔内スキャナーを用いた光学印象採得の実習を加えたところ、実習後の学生の理解度はそれ以前より有意に向上したことを紹介。教育でのデジタル・デンティストリーの活用によって、より実践的で高い学習効果が得られることを指摘した。

 最後に「福岡歯科大学口腔外科におけるデジタル・デンティストリー時代への試み」と題した講演で、横尾嘉宣氏(福歯大助教)が、口腔外科領域でも埋伏歯や顎骨腫瘍は術前に病巣範囲の把握を目的に3D実体モデルを作製したうえで手術の方法を検討することが一般的になってきていると説明。特に顎変形症領域では3Dシミュレーションを用いた手術計画に基づく顎矯正手術が普及し、国家試験にも出題されたことを受け、今年度より学生実習において3Dシミュレーションを実際に経験させる授業を開始したことを紹介。PC画像上で実際に手術を経験させることにより、従来の教科書などでの平面的な視覚情報では得られない、理解の向上に高い効果を発揮していると報告した。

 シンポジウム2「歯科医学教育白書2021年版にみるわが国の歯科医学教育の現状」では、本年3月に発刊された「歯科医学教育白書2021年版」の編集に携わった作成部会のメンバーより、その概要が報告された。ちょうどコロナ禍によるさまざまな活動が制限された期間の歯科医学教育の実際をまとめた報告書となり、座長の音琴淳一氏(松本歯科大教授)は「コロナ禍以前、以降に分けられる歯科医学教育の転換期に誕生した、きわめて有益な白書である」と、その意義を強調した。

 なお、本学術大会は、引き続き2023年7月17日(月)から31日(月)まで、大会ホームページにてオンデマンドによる配信を行っている。

関連する特集