2023年10月15日掲載

「Wire-BracketとAlignerによるHybrid矯正治療」をテーマに

第38回アレキサンダー研究会例会を開催

第38回アレキサンダー研究会例会を開催
 さる10月15日(日)、第38回アレキサンダー研究会例会(世話人代表・宇津照久氏)が、「Wire-BracketとAlignerによるHybrid矯正治療」をテーマに、富士ソフトアキバプラザ(東京都)およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催され、会場・オンライン合わせて98名が参加した。

 同会は、米国の矯正歯科医R.G. ”Wick ” Alexander氏による治療体系「The Alexander Discipline」を基礎とした矯正歯科治療を行う矯正専門医中心の研究会である。

 宇津世話人代表の挨拶のあと、まず佐藤英彦氏(サイエンス&アーツ)から中高年者の治療において考えられるアライナー型矯正装置による影響、今村美穂氏(山梨県開業)からアライナー矯正治療歴のある患者のリカバリー治療経験から考えられるアライナー矯正治療の懸念事項と行うべき機能的指導について問題提起が行われた。

 その後、相澤一郎氏(東京都開業)が「当院におけるリンガル矯正装置とアライナー型矯正装置の併用」と題して講演した。氏は、ほとんどの矯正歯科治療を舌側矯正装置で行っているが、患者の要望からアライナーを取り入れている現状について述べた後、各装置のモーメントについて解説し、こうした装置による違いや歯の移動の特徴を把握したうえで、その使い分けや導入の時期の検討などを治療計画に反映した例を症例供覧にて示した。

 次に本吉 満氏(日大教授)が登壇、講演「ワイヤー/マウスピース/アンカースクリューによるHybrid矯正治療の可能性と限界」が行われた。まずワイヤー矯正治療の治療結果とアライナー矯正治療の治療結果を比較したシステマティックレビューを提示したあと、自身のハイブリッド矯正治療について6例を供覧した。患者の要望とアライナー矯正治療の限界との間で、従来の矯正歯科治療でも重視されてきた診断の重要性、装置使用開始のタイミングの重要性と難しさが述べられた。

 最後に槇 宏太郎氏(昭和大特任教授)が登壇し、「Wire-BracketとAlignerによるCombination治療」と題し、講演した。氏は、「アライナー矯正治療で100%治るというのはあり得ない」としたうえで、これまでの自身とアライナー型矯正装置とのかかわりについて述べた。また、自身のバイオメカニクス研究をとおして提案するに至った、超微弱矯正力を用いた審美的な矯正歯科治療について述べた。さらに、実際にアライナー矯正治療が患者に求められるなか、問題症例とそのリカバリーについて、矯正専門医がもっと多くの情報を共有すべきであるとした。

 最後のプログラムとして演者3名によるシンポジウムが行われた。まず宇津世話人代表から議論の活性化を目的として、アライナーではその実現が困難であろうと思われる、上顎両側第一大臼歯抜歯による前方10歯の一括後方移動や大幅な上顎前歯の圧下をともなうガミースマイルの改善などの映像が提示され、それに続き会員からの活発な質問や議論が行われた。

 アライナー矯正治療が術者・患者双方において話題になるなか、機能を考慮しない治療や治療ゴールがあいまいなまま治療終了となり転医してくる例など、歯科医院がアライナー矯正治療を手掛けるうえでの問題も浮き彫りになった会となった。

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