2023年10月23日掲載

アライナー矯正治療をはじめ多様なテーマを議論

JANO2023 第28回日本非抜歯矯正研究会開催

JANO2023 第28回日本非抜歯矯正研究会開催
 さる10月23日(月)、24日(火)の2日間、東京アメリカンクラブ(東京都)において、JANO2023 第28回日本非抜歯矯正研究会(賀久浩生大会長)が開催され、約60名が参集した。同会は、いずれも米国の矯正歯科医であるNorman M. Cetlin氏(1921年~2008年)の非抜歯矯正治療、Raphael L.Greenfield氏(1944年~2022年)のCADテクニックをルーツとする、臼歯部を重視した矯正歯科治療Molar Oriented Orthodontics(MOO)に基づきさまざまな矯正装置を活用した治療を行う矯正歯科医が集い、日々の歯科臨床のために研鑽を行う会である。

 今回は非抜歯・抜歯治療、矯正歯科治療におけるAIの活用、機能的矯正装置、矯正歯科治療における上唇小帯のマネジメントなど、多様なテーマで依頼講演がなされた。そのうち佐本 博氏(東京都開業)による特別講演「改めて、アライナー治療における抜歯症例について考える」では、自身のアライナー矯正治療では非抜歯治療が大半となっているとしつつも、非抜歯/抜歯の判定の境界線にある症例をどのように判断しているかについて解説した。「抜かなくても結果が同じなら抜かない方が良い」となるべく健康な歯を抜歯せず、生体が元来個性としてもっている形態を尊重しつつ治療を行う自身のスタンスにふれながら、軟組織を含めた側貌とのバランス、上下顎前突のタイプ、初診時の叢生量、矯正力に対して必ず生じる反作用などから考える治療計画と実際の治療について、症例を供覧しながら述べた。

 またJean-Marc Retrouvey氏(米国・ミズーリ大学カンザスシティ校元教授)の講演「Orthodontics 4.0: Artificial Intelligence, A Blessing or A Curse?(矯正歯科におけるAI:祝福か? 呪いか?)」では、AI(人工知能)の概要と現在の活用状況、また矯正歯科における現在の活用範囲と今後の展望について述べられた。将来的にはさらに不正咬合や治療計画の分類、セグメンテーション、排列がAI主導で行われていくであろうとする氏に対し、賀久氏が「では歯科医師の仕事はなくなるのでしょうか」と問うと、「そんなことはけっしてなく、現在行っていることをより高い正確性をもって行うということになる」と回答した。

 他にも依頼講演として大塚 淳氏(岡山県開業)による講演「『プレオルソユーティリティ』活用方法 プレオルソユーティリティとはなにか?」、藤本浩平氏(東京都開業)による講演「上唇小帯の矯正治療におけるマネージメント」、前回の同会で策定されたテーマについて講演するトピック症例講演として、吉田忠雄氏(兵庫県開業)による「A Case of Skeletal Class III Treated FMA & Vertical Chin Cap Case728」、有本博英氏(大阪府開業)による「Invisalign treatment for Class II / III cases with Align Digital Workflow」が行われ、さらに同研究会で「マスター」の資格を取得後5年ごとに行われる発表として兼子宏一氏(大分県開業)、山本昌宏氏(兵庫県開業)が登壇した。またパールセッションとして会員から症例や臨床に役立つトピックが供覧され、会員同士で活発な問題提起や議論がなされる機会となった。

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