2023年11月26日掲載

唾液学・唾液検査学の創生による国民の健康増進をテーマに

第2回日本唾液ケア研究会学術集会が開催

第2回日本唾液ケア研究会学術集会が開催
 11月26日(日)、神奈川歯科大学(神奈川県)において、NPO法人日本唾液ケア研究会による第2回日本唾液ケア研究会学術集会(日本唾液ケア研究会主催、槻木恵一理事長)が、「唾液学・唾液検査学の創生による国民の健康増進」をテーマに開催された。

 日本唾液ケア研究会は、唾液の健康効果を科学的に明らかにし、臨床応用への取り組みの推進や健康効果の啓発を目的に、口腔の健康から全身の健康を目指す団体である。

 冒頭、槻木氏(神歯大副学長)は開会挨拶のなかで、「口腔の健康が全身の健康につながる」という認識は社会に広まってきているものの、唾液を介した健康維持の重要性は周知が進んでいないことを課題に挙げた。そのため本会では、簡易的なスクリーニングとして発展と普及が期待されている唾液検査に注目し、概念の再考や精度管理の重要性、今後の展望についての議論の場となることに期待の言葉を述べた。

 次に、槻木氏の座長のもと、菊谷 武氏(日歯大教授、口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)による特別講演「唾液コントロールの成否は人生の最終段階におけるQOLを決する」が行われた。菊谷氏は、後期高齢者を中心にフレイルが加速することで歯科医院から足が遠のいてしまった患者さんが訪問歯科診療の現場で増えている現状に言及。訪問歯科での対応を想定した口腔状況を外来時から意識することの重要性や、そのような患者さんこそ歯科治療が必要とされていることを訴えかけた。

 続いて、「いい唾液の日記念イベント」と題し、唾液ケア推進への貢献や優秀な論文を発表した臨床家と研究者に対し、槻木氏より表彰が行われた後、授賞講演が行われた。今年は、井上 和氏(歯科衛生士、ぶっちゃけK’s seminar主宰)、高木直美氏(歯科衛生士、beside-U合同会社主宰)、高木悠里氏(管理栄養士、同社主宰)、石川恵生氏(山形大医学部歯科口腔外科講師)、高木幸則氏(長崎大大学院医歯薬学総合研究科口腔診断情報科学分野准教授)、高 靖氏(九州大大学院口腔常態制御学講座口腔細胞工学分野助教)、戸田(徳山)麗子氏(鶴見大歯学部口腔内科学講座学内講師)、嶋崎義浩氏(愛院大歯学部口腔衛生学講座教授)、山田蘭子氏(岡山大大学院医歯薬学総合研究科口腔・顎・顔面機能再生制御学講座咬合・有床義歯補綴学分野大学院生)の9名が受賞した。

 その後は、「国民皆歯科健診と唾液検査」と題したシンポジウムが行われ、三邉正人氏(千葉県開業、日本唾液ケア研究会理事)の座長のもと、新宅正成氏(厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室室長補佐)、山本龍生氏(神歯大口腔衛生学教授)、猿田樹理氏(同大教育企画部教授)による講演が行われた。新宅氏は、簡易検査キットを活用したスクリーニングの実用化に向けた取り組みとともに、厚労省として国民皆歯科健診の今後の見解を解説した。山本氏は、歯科健診を必要としている人ほど定期歯科健診に行っていない現状から行政や職域の健診強化の必要性に言及した。猿田氏は、さまざまな唾液の解析手法についてふれながら今後の展望や期待について述べた。

 その他にも、フォーラム、ランチョンセミナー、ポスター発表など多岐にわたるプログラムにて講演が行われた。会場では、口腔ケア製品や検査キットを扱う企業が出展し、来場者の関心を集めていた。

 歯科界においては「口腔機能低下症」、「口腔バイオフィルム感染症」が新病名として認められるなど、より未病の段階でスクリーニングするための簡易検査キットの普及や口腔機能管理(料)の認知を広めていく活動は重要になると思われる。今後の動向に注目したい。

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