2023年12月10日掲載

「JPDAを築いた4人が伝えたいこと」をテーマに

第8回有床義歯学会学術大会が開催

第8回有床義歯学会学術大会が開催
 さる12月10日(日)、第8回有床義歯学会学術大会(有床義歯学会〔以下、JPDA〕主催、亀田行雄会長)が、コングレスクエア日本橋(東京都)の現地およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催され、会場に約200名、およびWeb聴講者約80名が参集した。

 第8回目の学術大会となる今回は、「JPDAを築いた4人が伝えたいこと」をテーマに、JPDA、およびその前身となるスタディグループJDA(Japan Denture Association、阿部二郎会長、JPDA名誉会長)の草創期から参加する歯科医師4名が登壇。JPDAが世界に向けて発信し続けてきた「下顎総義歯吸着理論」をはじめ、昨今の技術の進化を受けてのデジタルデンチャーの話題まで、バラエティ豊かな4題が並んだ。以下に演題と概要を示す。

(1)「Ultimate Suction Denture!! ―下顎総義歯吸着100%に挑む―」佐藤勝史氏(山形県開業)
 本演題では、「下顎顎堤吸収症例に適した印象法は?」「下顎無歯顎口腔内条件と吸着との関係性」の2つのテーマを軸に、義歯の辺縁全周を封鎖する下顎総義歯吸着理論の基礎から、この吸着を阻む口腔内条件(開閉口時の口腔底形態の変化や、開口時の舌の後退)への対応などについて解説された。

(2)「咀嚼ベクトルをコントロールする ~総義歯3つのエッセンスより~」齋藤善広氏(宮城県開業)
 本演題では、「印象採得」「咬合採得」「人工歯排列」の総義歯3つのエッセンス、および機能時の咀嚼ベクトルをコントロールするための「大野の台形法」「ゲルバーメソッド」および「義歯治療の客観的評価、生理的受け入れ」について詳説。かねてから「義歯は動いて機能する」をキーワードに講演・執筆活動を行っている齋藤氏ならではの内容としていた。

(3)「残存歯を守るインプラント&パーシャルデンチャー 機能回復から歯周環境調和へのパラダイムシフト」亀田氏(埼玉県開業)
 本演題では、多くの高齢者が総義歯を装着して生涯を終えるのではなく、部分床義歯を装着して終える時代に向かっている昨今の状況をふまえ、パーシャルデンチャー成功の要諦について解説。インプラントを併用するか否かにかかわらず、動きの少ない義歯を提供すること、また良好な歯周環境の構築の2点が特に重要であるとし、中長期症例を多数供覧した。そのうえで、2インプラントインプラントオーバーデンチャーの有用性、残存歯の保存を目指した義歯設計と歯周治療の必要性、およびインプラントを併用した部分床義歯の有用性を強調した。

(4)「20年間『吸着』義歯成功を追求した結果、デジタルに辿り着いた!」山崎史晃氏(富山県開業)
 本演題では、JDA時代から阿部氏に師事し、国内・海外講演や執筆活動を通じて下顎総義歯吸着理論の普及に努めてきた山崎氏が、ここ数年取り組んでいるデジタル総義歯について解説。「歯科医師として、(アナログの技術をもった)歯科技工士と対等に話をするためにデジタル義歯を始めた」という山崎氏。歯科医師みずからが望んだ形態を設計できることのメリットやその精度、3Dプリント義歯を試適に用いることの有用性、ミリング法と3Dプリンティング法それぞれのメリット・デメリットや実際の症例について存分に示した。

 その他、会場ではテーブルクリニックとして、「下顎総義歯製作のための各個トレー外形線決定の基本と顎堤条件による対応」(野澤康二氏、歯科技工士、シンワ歯研)、「ゴシックアーチ描記装置製作時の注意点」(佐野和也氏、歯科技工士、サヤカ)、「義歯製作のデジタル化」(亀遊宏直氏、歯科技工士、キユウ・デンタル・スタジオ)、「口腔内での調整軽減に繋がる咬合器上での咬合調整」(森永 純氏、歯科技工士、ライズデンタルコミュニティー)の4題が行われた。

 また、閉会にあたっては阿部氏が総括として「下顎吸着義歯を自院で実行するために」と題して登壇。師との出会いや、下顎吸着義歯をはじめとする自分が理想とする臨床を行うための院内および歯科医師の意識改革の重要性、そして今後のデジタル総義歯についての展望を示した。

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