2024年1月28日掲載

天野敦雄氏が「院長から始める防ぎ守る歯科医療」をテーマに講演

大阪大学歯学部同窓会、第571回臨床談話会を開催

大阪大学歯学部同窓会、第571回臨床談話会を開催
 さる1月28日(日)、大阪大学歯学部同窓会(平野裕之会長)による第571回臨床談話会が、大阪大学歯学部記念会館(大阪府)およびWeb配信にて開催された。今回は講師に天野敦雄氏(阪大大学院教授)を迎え、「院長から始める防ぎ守る歯科医療―歯科医院を輝かせる予防型診療システム―」のテーマで講演が行われた。

 これからの時代に主流となるのが、予防管理型の歯科医院。その実現のために院長がいま知るべきこと、実践すべきことを、「最新病因論」「歯科衛生士の育成」「患者教育」などの観点から天野氏が本講演でまとめた。

 氏はまず、う蝕と歯周病の最新の病因論を解説。細菌学的に、口腔内のディスバイオシスがう蝕や歯周病の発症につながることから、「バイオフィルムの高病原化を防ぐ」ことが予防の意義であると述べた。そしてそのために重要なのが、歯科によるプロフェッショナルケア、つまりSRPであるが、SRPがうまくできる歯科衛生士の育成に悩む院長は少なくない。そこで天野氏が提案するのが、院長自身がSRPに習熟することだ。院長が適切なSRPを身につけられれば、歯科衛生士にも教えられるようになるというのがその理由である。

 氏は、超音波スケーラーを使う際のポジショニングやチップの動かし方にはじまり、ハンドスケーラーの持ち方、ストロークのしかたを解説。さらに‟あまの式SRP”と題して、右手で刃部を歯に当てつつ、左手で引く(ストロークする)両手持ちの手法を披露した。この動かし方だと、ストロークが安定し、疲労が軽減される。しかもこの手法は、刃先の根面への接触状態をイメージすることが重要なため、タービンのバーの先端をイメージして歯を削る操作に慣れている歯科医師には習得しやすいという。

 患者教育については、「ティーチングではなくコーチング」への意識変換を求めた。なぜ歯周病になってしまったのか、改善するにはどうすればいいか――その答えを患者にすぐに教えるのではなく、「どうしてなってしまったと思いますか」と、自分で考えてもらえるような言葉がけをすることが、患者の行動変容につながるという。

 そのほか、S-RPGフィラーやフッ化物徐放性シーラント、クルクミン配合歯磨剤など、う蝕や歯周病予防に効果的な製品も紹介した。

 講演後には会場やWeb視聴者からの質疑応答の時間が設けられ、「歯周ポケットの内部がアルカリ性になるのはなぜか」「妊婦の歯周病が増えるのはなぜか」「乳酸菌タブレットはう蝕に影響するか」などの質問が寄せられた。

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