2024年3月30日掲載

50年の臨床経験から、氏の臨床哲学や審美観、圧巻の症例が披露される

Prof. Bernard Touati特別講演会開催

Prof. Bernard Touati特別講演会開催
 さる3月30日(土)、株式会社ジーシー(東京都)において、Prof. Bernard Touati特別講演会(5-D FST[Follow-up Study Tokyo]主催、菊地康司会長)が約80名を集め開催された。

 特別講演に先立ち、5-D FST会員である上津原悟郎氏および内藤浩司氏(ともに東京都開業)によるケースプレゼンテーションが行われ、Touati氏からプレゼン内容や臨床に関する建設的なコメントが述べられた。

 続いて、Touati氏が登壇し特別講演会が始まった。氏はかつてのパリ第5大学の教授にして、パリおよびモスクワでの開業の他、「Practical procedures & aesthetic dentistry(PPAD)」誌の編集長を15年務めた歯科界のレジェンドである。現在は歯科医師を引退し、モロッコのマラケシュにて画業に専心している。特別講演は第一部にセラミック修復、第二部にインプラント治療をテーマに展開された。氏は著名なハリウッド俳優たちのスマイル写真を提示し「彼らはみな美しい顔立ちをしているが、歯肉や歯の形は個々で大きく異なる。機能やバイオロジーを無視した審美はあり得ない」と述べ、すべての歯が美しいプロポーションで左右対称の歯列が必ずしも正解ではなく、その患者特有の要素や要望を汲み取って歯科治療にあたるべきと臨床哲学を披露し、主にノンプレップベニアやマイクロプレップベニアを用いた繊細な補綴治療の症例を供覧し、喝采を浴びた。理想的には、いかに最小限の侵襲で予知性高く、そして再現性のある補綴処置を行うかが重要であると強調した。第二部では、粘膜貫通部となるエマージェンスプロファイル形態に関する自身の研究成果を詳らかにし、アバットメントを装着したらできるだけ外さない「One-abutment、One-timeコンセプト」の考え方が有効で、ここでもバイオロジーを考慮した接合様式や材料を用いるべきだと主張した。

 講演後には質疑応答の時間が設けられたが、質問に対する回答だけでなく、そこから飛躍して展開される氏の博覧強記ぶりに、いまだに衰えない歯科への情熱が垣間見え、印象的な講演会となった。3年前にリタイアし今は画家であるといってもこの道50年の大ベテランの含蓄のある言葉は重く、参加した日本の若い歯科医師たちが最後まで熱心に聴き入っていた。

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