2024年3月30日掲載

「幼児から成人まで睡眠呼吸障害のある患者に対する頭蓋顔面の最適化プロトコール」をテーマに

オードリー・ユーン先生日本特別講演会開催

オードリー・ユーン先生日本特別講演会開催
 さる3月30日(土)、虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都)において、「オードリー・ユーン先生 日本特別講演会」(Perio Health Institute Japan、一般社団法人小児口腔発達学会主催)が「幼児から成人まで睡眠呼吸障害のある患者に対する頭蓋顔面の最適化プロトコール」をテーマに開催され、歯科医師や歯科衛生士など約300名が参集し盛会となった。

 今回特別講演を行ったオードリー・ユーン氏(米国・スタンフォード大睡眠医学センター)は、海外各国の歯科大学で臨床教授として教鞭をとる一方で、研究でも著名なジャーナルへ論文を複数発表しており、米国で主に小児矯正治療に携わる臨床家でもある。今回は睡眠呼吸障害を中心に、国際的に活躍する演者の多岐にわたる豊富な知見が披露された。

 まず教育に関して、氏が教鞭をとる米国の大学では、睡眠時無呼吸症候群の認知が広まり、歯科の役割が明確に知られてきたことで、睡眠歯科のカリキュラムが組まれ、基礎講座の他に、医科の関連分野を学べる講座もあるという。矯正歯科医で睡眠歯科を学びたい人は、ぜひこうした大学で幅広く学んで欲しいと奨励しつつも、確実なガイドラインに基づいたカリキュラムであることを重視して選択すべきだと強調した。

 研究のみならず教育でも盛んになってきた睡眠歯科と、一般臨床の歯科を結びつけたいというユーン氏が創設した団体 “World Dentofacial Sleep Society” では、今後関連分野と連携したガイドライン作成を目指し、関連専門家の交流の場を設ける構想があることを述べた。

 また、臨床では矯正歯科医が臨床で遭遇する歯列不正の要因は2つに分類され、叢生など見てわかる表面的要因と、歯科でわかる不正咬合、口腔機能不全など内面的要因があるとし、発達段階にある小児では、特に歯列や口腔機能への影響が大きい舌に注目して注意深く診断すること、治療にあたっては、頭部・顎顔面の発育についても考慮した治療計画をたてることが重要であるとした。

 診断にあたっては、既往歴、医療面接、検査の3要素でスクリーニングを行っているとし、演者の自院での取り組みとして、これまで一般的に用いられる質問票だけでなく、保護者や年齢により患児にも答えやすくイラストを並べたチェックシートを作成して用いているなどの工夫を語った。

 臨床での経験とともに、海外でのシステマティックレビューや参考になる論文も紹介し、関連して骨格と気道を含め頭蓋部の発育時の解剖についても解説が行われた。発育時、数か月、数年で変化する拡大床や矯正治療にあたり、人体には部位ごとや年齢で発達に速度があり、身体が完成する時期も男女差があることを理解したうえで、時に耳鼻咽喉科医や外科医など医科の専門家に紹介や相談を行うことも必要とし、個人差を考慮したチームでの治療が求められることを強調した。

 最後はユーン氏の膨大な数にのぼる症例が供覧され、特に複数の症例で睡眠時、イビキをかいているときの気道の動きを内視鏡で映した貴重な動画や、長期経過の写真も多数披露された。講演後の質疑応答では、聴衆から多数の質問が寄せられ、関心の強さがうかがえた。

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