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2010年5月15日

第85回日本医療機器学会大会開催

歯科器材に関するシンポジウムを初開催

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 さる5月13日(木)から15日(土)にかけ、福岡国際会議場(福岡県)において、第85回日本医療機器学会大会が多数の参加者のもと、開催された。

 近年、医科領域においては医療器材の洗浄・滅菌業務への関心が高まりつつあるが、多くの器材を取り扱い、本来その重要性が高い歯科領域において質の高い洗浄・滅菌方法が確立されているとはいえず、旧態依然とした処理が行われている現実もある。そこで15日(土)には、今回初めて眼科領域とあわせて歯科領域にスポットをあてたシンポジウム「安全な洗浄・滅菌のクオリティをめざして」(座長:高階雅紀氏、阪大医学部附属病院材料部副部長、島崎 豊氏、愛知県厚生連海南病院医療安全管理部看護師長)が開催された。

 会場では医科から「眼科治療機器の洗浄・滅菌」と題して登壇した杉田 達氏(東京都開業)に続き、歯科の分野ではまず、「歯科治療機器の洗浄・滅菌」と題して樋口勝規氏(九大病院口腔総合診療科教授)が登壇。樋口氏は、つねにエアーゾルや血液の暴露の危険性をともなう歯科治療において感染対策は必須と強調。医科と同様に歯科治療器具をクリティカル、セミクリティカル、ノンクリティカルに分類し、各々の特性に応じた洗浄・消毒、滅菌方法をとることの重要性を指摘し、その具体例として九大病院での取り組みを紹介した。

 引き続き、「歯科用ハンドピースの洗浄」と題して登壇した佐藤久美子氏(歯科衛生士・olive dental house)は、独自に行った10種類の歯科用ハンドピースの本体接続部分に1ccの血液を付着させ、歯間ブラシでの用手洗浄とウォッシャーディスインフェクターでの器械洗浄後の汚染度を比較検証したところ、器械洗浄のほうが非常に効果が高かったとの結果を報告。内部構造が複雑なハンドピースは高度な汚染に曝されやすく、器械洗浄が不可欠と強調した。そして、医療機関ごとに異なった処理が行われている歯科において、早急に統一された感染対策の確立が必要と訴えた。

 その後、「海外および国内施設における歯科用器材の取り扱い方」と題して登壇した柏井伸子氏(歯科衛生士・(有)ハグクリエイション代表)は、その形態・構造・材質などから取り扱いがもっとも複雑と考えられる歯科用ハンドピースについて、すでに洗浄・滅菌などの方法が標準化・器械化の進む海外施設と、まだ用手洗浄中心の日本での処理方法の違いを紹介。また、スウェーデンにおける口腔外科手術後の器材処理の実際を動画で提示し、日本でも感染対策という観点から、臨床現場と製造者・販売者が一体となって科学的により安全性を追求すべきと強調した。

 病院などを中心に器材処理の中央化が図られようとするなか、医科器材とは異なる歯科器材の繊細かつ特殊性が示され、参加者も高い関心を寄せていた。80年以上の歴史をもつ本学会だが、日本医科機器学会から日本医療機器学会へと名称が変わってまだ2年余りであり、今後は歯科領域における本学会の貢献が期待される。