歯科衛生士 2012年4月
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PART 1「医療人マインド」での「医療人マインド」での接し方を学ぶ接し方を学ぶ患者さんの思いや行動を理解する共感の「心」で接しよう1長期にかかわるためには信頼関係が重要歯科衛生士が行う重要な業務にメインテナンスがあります。メインテナンスは長期にわたり患者さんとかかわることで、口腔という側面から健康をサポートしていく仕事ですが、私たち歯科衛生士との信頼関係がない限り、患者さんに長く続けていただくことは困難といえます。メインテナンスに限らず「あの歯科衛生士さんがいるから通い続けよう」、そう患者さんに感じていただけるような信頼関係がとても重要です。信頼関係の鍵、それは歯科衛生士として患者さんの気持ちや思いを理解し、共感する=「共感力」です。けれども「共感」は、頭で考えるほどたやすくできるものではありません。「共感」は、「同意」「同感」「同情」とは異なる「共感」は一見、“気の毒に、かわいそうに”といった「同情」にも、また“私もそう思う、私も同じ考え”といった「同意・同感」とも似ています。しかし、共感はこれらとはまったく異なった性格のものです。たとえば、ここに愛犬を亡くした女性がいたとしましょう。彼女を気づかい友人が寄りそっています。「かわいそう……つらいよね。私も猫が死んでしまったとき、とっても悲しかったもの。あなたの気持ちはよくわかるわ」友人はあたかも女性のつらさを「共感」しているかのように聞こえます。しかし厳密には、自らの猫を亡くしたつらい経験を彼女に映し、「あなたの気持ちはよくわかる」と言っている。あくまでも自分の体験に基づいて女性を理解しているにすぎないのです。これに対して、「共感」は、自らの感情を入れることなく、中立的な立場から相手を理解し、相手の世界を共有することです。相手はどのようにつらく、悲しいのか、何を感じ、どう思っているのか……など、相手の気持ちや思いを理解し共有する姿勢です(図1)。歯科臨床において歯科衛生士の「共感」姿勢が、患者さんに「理解してくれている」「気持ちをわかってもらえている」という安心感を与える力となります。それがひいては、安心感が行動しようとするエネルギーに変わり、モチベーションにつながっていくのです。コミュニケーションを語るにあたり、もっとも大切なことは、医療従事者としての誠実な姿勢と患者さんを理解しようとする心、そして、患者さんを支えていく共感力を身につけていただくことと考えます。図1 共感は同情や同感とは異なる16 歯科衛生士 Vol. 36 No. 4/2012

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