歯科衛生士 5月
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骨粗鬆症への歯科的対応胃切除後に骨粗鬆症と診断されBP剤が処方されている患者さんは、SRPや抜歯等の外科処置によって発症することのあるBP剤関連顎骨壊死(BRONJ)に注意します(図11)。患者さんは骨折予防の必要があるためにBP剤を処方されているので、服用を中止できる患者さんは限られます。BP剤の内服に対し過剰に反応し、歯科治療時のリスクばかりを強調するのは良くありませんから、医科との情報交換をよく行い歯科治療にあたる必要があるでしょう。まだBP剤を服用していない胃がん既往の患者さんでも、中高年女性は骨密度が低い場合が多くBP剤使用の予備群と考えられます。近い将来にBP剤が開始されることを想定しておきましょう。胃がんが骨に転移することは少ないですが、転図11 BRONJ。76舌側に壊死骨の露出を認める。抜歯や歯周外科等の観血的処置がハイリスクとされるが、慢性の歯周炎から自然発症する例もある。義歯による歯肉の褥瘡性潰瘍や骨隆起で被覆する薄い歯肉部分から発症する例もある。胃の手術後は食べられない、食べてもなかなか太れない患者さんが多くみられます。本来4時間かけて胃や腸等で消化酵素がすべての栄養を分解吸収しますが、胃を切除した人は1時間ほどですべての食物が腸に流入するため、消化酵素が対応しきれないからです。一方、胃全摘出後では内因子(胃壁細胞によりつくられる糖タンパク質)がなくなってしまうのでビタミンB12の吸収が低下し、貧血や骨障害の原因になります。胃酸の減少や消失が吸収に大きく影響する栄養素が鉄とカルシウムです。カルシウムは胃酸でイオン化されて小腸で吸収されるため、胃の手術後は吸収が損なわれます。血液中のカルシウム不足を補うために骨中のカルシウムが溶解し、術後5年以上経過すると半数以上の患者さんの骨量が低下するといわれます。特に閉経後の女性は骨粗鬆症になりやすいので、注意が必要です。脊椎の圧迫骨折を生じて背中が湾曲すると食道と胃の接合部が緩み、内容物の逆流が起こりやすくなります。胃がん手術後の骨代謝マーカー測定の結果、骨粗鬆症後遺症③骨粗鬆症と診断されたら破骨細胞の作用を抑えるビスフォスフォネート製剤(以下BP剤)が有効です。カルシウムやビタミンD等も処方されます。BP剤は腸からの吸収が悪く食事と結合しやすいので、服用に注意が必要です。カルシウムは小魚や乳製品で補給します。乳製品に含まれるカルシウムは吸収されやすいので、牛乳で下痢をする人はヨーグルトを試すのもよいでしょう。 骨を支持する筋力を低下させないために適度な運動も大切です。●朝に起床後、朝食前に、他の薬の服用は避け、BP剤のみ単独で、通常の水(牛乳・ジュース類や、カルシウム含有量の多いミネラルウォーターは避ける)で服用してもらいます。 → BP剤がミネラルなどと結合し、吸収が低下するのを防ぐための工夫です。●コップ1杯の充分量の水とともに飲み、服用後30分は横にならないようにしてもらいます。 → BP剤は酸性が強いため、口や食道の粘膜に付着すると潰瘍を形成するリスクがあるためです。移の場合、高用量BP剤を注射する可能性があります。そうすると、骨粗鬆症に対する経口薬よりもBRONJの発症リスクは遥かに高くなります。BP剤の特徴的な内服方法THE JOURNAL OF DENTAL HYGIENIST 23特別企画胃がん手術を経た患者さんに歯科衛生士がサポートできるコト歯科医院でもますます増える!

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