歯科衛生士 5月
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新しい新しいステージにステージに入った!入った!本当に臨床で役立つ進化したEBM のための研究へと進化している*1【コクラン・コラボレーション】医療の効果の判定にはRCTを統合した研究が必要だと主張した、Archiebald Cochraneを祈念してつくられた国際協力機関。世界中のネットワークにより、網羅的な情報収集が行われ、医療の評価に関して多くのシステマティック・レビューがつくられている。その成果を集めたコクラン・ライブラリーでは、治療法を単に効く効かないではなく、効果と害の大きさを示すことを目的としている。2014年に日本支部がつくられ、希望する人は誰でもレビュー作成のトレーニングを受けることができる。*2【Mindsガイドラインセンター】http://minds.jcqhc.or.jp/n/で診療ガイドラインを検索できる。図1 エビデンス・ヒエラルキーシステマティック・レビュー(SR)、RCTのメタアナリシス1つ以上のRCTによる研究非RCTによる研究観察研究(コホート研究)観察研究(症例対照研究、横断研究)患者さんデータに基づかない専門委員会や専門家個人の意見記述研究(症例報告やケース・シリーズ)SRやRCTがもっともエビデンスがあるという考え方その後、過去の学びを通してEBMは変化していきます。現在では、研究のための研究ではなく、臨床のための研究へと進化していきました。 歪められたEBMのあり方に対して、EBMの提唱者Guyattを中心に、GRADE(Grading of RecommendationsAssessment, Development and Evaluation)という活動が2000年ごろより始まりました。研究デザインのみでエビデンスの質を判定するのではなく、RCTで測定したアウトカム(測定項目)が、患者さんにとって意味のあるものかどうかを重視する方法です。たとえ立派なRCTでも、血圧のわずかな変動や、検査値が少し変わったという程度の代理のエンドポイントの変化ではなく、生死や病気の本質的な変化にかかわるものを測定しているのかを重視しました。 このアウトカム重視の考え方は、世界中に多くの賛同者を生み、GRADEは現在ではWHOをはじめとして多くの診療ガイドライン、コクラン・レビューなどに採用されています。また、今日では薬剤開発の過程で製薬企業や研究者の不正行為がいろいろと明るみに出るようになりましたが、これらも患者さんに役に立つアウトカムを大事にしようという、GRADEアプローチの影響を受けています。しかし2000年ごろになると、RCTが間違った形でとらえられ、悪用されるようになります。 2000年ごろになると、「RCTがあればエビデンスあり」という短絡的な風潮が広まりました。特に、診療ガイドラインではRCTを重視して作成される傾向が強まりました。RCTを行うには莫大な費用がかかり、そのコストを投入できるのはビッグ・ファーマといわれる大手の製薬企業です。実は世界的な大手製薬企業は、新薬をより効果的に見せるためにコンサルタントの指導の元でRCTを量産し、都合の良い結果のみを一流医学誌に報告して、自社製品の販路を広げていったのです1)。EBMが誤った活用の手段となっていったのです。1997年に発刊されたEBMの教科書によって、医療関係者の間でEBMはさらに広がっていきます。 1997年に発刊されたDavid Sackettによる教科書「EBM」は、世界的なビッグヒットとなりました。これによってより広くEBMが浸透していくようになりました。 1997年 2000年 現在79歯科衛生士 Vol.38 May 2014

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