歯科衛生士 2016年6月
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 ミスをするのは、誰しも気分のいいものではありません。ものごとを完璧にやりたいと思っていても、うっかりミスをしてしまい、恥ずかしさを感じたり、不安になったり、自信がもてなくなったりすることは経験があるでしょう。 ミスをする「人」に注目すると、個人の資質の問題ということになりがちです。それは“犯人探し”のような空気になってしまうだけで、問題の解決にはつながりません。 それよりも、「人はミスをしてしまうものだ」という前提で、仕組みや方法を改善して、ミスの発生率を最小限に抑えるほうが効果的です。ミスを防ぐためには、「人」ではなく、ミスの発生率を高めてしまう仕事場の「環境」に注目して改善方法を考えましょう。そのために重要なのが、仕事を“視える化”するという考え方です。“視える”とは、“示して見せる”ということで、「余計なものをすべて整理して、誰が見てもすべきことがわかるような仕組みをつくる」のが“視える化”です。 まずは、ミスが起こる理由をしっかり分析してみましょう。歯科医院でみられるミスのほとんどは、「不注意によるミス」と「思い込みによるミス」に分けられます。①不注意によるミス 不注意によるミスは、十分に注意が払えなかったせいで起こります。注意のレベルが下がったり、ほかのことに意識が向けられて、注意を保つことができないために起こります。②思い込みによるミス 思い込みによるミスは、自分の持っている知識のみで状況に対処しようとするときに起こります。周囲に尋ねたり調べたりせずに、不確かな記憶や知識のまま“自分なり”に解釈して行動した結果起こります。 不注意によるミスを防ぐには、注意力が持続しやすい(注意を払わなくても行動できる)よう、注意すべき事柄のみが“視える”仕組みが必要です。そして、思い込みによるミスを防ぐには、不確かな記憶や知識で対応することのないよう、手順やすべきことがその場で“視える”仕組みをつくることが求められます。これらを無理なくできる仕組みをつくるのが、モノ、状況、行動の“視える化”です(表1)。 では次ページより、視える化によってミスをなくせた医院の例を、業務別にご紹介します。“視える化”でミスが起きにくい環境づくりを「視える」ことでミスは防げる表1 “視える化”のポイントすべきことがわかるようにする作業工程や物の置き場所などを、一目でわかるようにする。注意すべき対象に注意が向くようにする視覚表示を用いて、大きさを変えたり、色を付けたり、音を出したりして、目立たせる。状況を共有できるようにする各人の知識や記憶に頼るのではなく、誰の目にも状況がすぐにわかるように環境を整える。動作を付加する声に出したり、指差し確認などをして、自分や周囲の注意を向ける。注意を余計なところに向けさせない余計な情報は隠して、対象以外に興味関心を引くものが目に入らないようにする。自己チェックできる仕組みをつくる自分で注意すべきことを思い出せる仕組み(チェックリストなど)をつくる。「人」のせいにしてもミスは解決しない状況の視える化行動の視える化モノの視える化伝達手段を単純化する各人に伝えやすい、または伝え間違いが起こらないような単純化した伝達手段を用意する。55歯科衛生士 June 2016 vol.40

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