歯科衛生士 2016年9月
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の使い分けセルフケアでもプロケアでもできてますか? 次亜塩素酸や酸を主成分とする義歯洗浄剤は、金属を腐食させると言われています2)。しかし、実際にステイン除去効果が高いのは次亜塩素酸系義歯洗浄剤であり(図8)、歯石除去効果が高いのは酸系義歯洗浄剤です(図9、表2)。義歯装着者の中には、特異的に歯石様沈着物やステインが義歯に付着していることもあるため、歯科医師や歯科技工士に義歯材料を確認したうえで、これら次亜塩素系および酸系義歯洗浄剤の使用を検討すべきだと考えます。歯石やステインが付着しているにもかかわらず、義歯材料を確認できない場合には、次亜塩素酸系や酸系義歯洗浄剤を試しに使ってみます。使用後義歯の構成要素に影響がなければ問題ありませんが、黒ずむなど影響が出た場合には、歯科医師と話し合い、義歯材料に影響を及ぼさないものを検討しましょう。もしくは、最初は中性の洗浄剤をとりあえず使用してみて、構成要素に影響がないのを確認したら、次亜塩素酸系か酸系義歯洗浄剤を使用するのも良いかと考えます。 また、酸系義歯洗浄剤でも、商品によっては義歯材料の劣化に配慮し、適応金属が広い義歯洗浄剤もあるため(図10)、「酸系=金属腐食」という概念で一概に使用を避ける必要もないでしょう。金属の場合 義歯に用いられている主な材質は、金属とレジンです。人工歯には、レジンだけではなく、金属や陶材を用いたものもあります。支持・維持装置には、ワイヤークラスプ、鋳造鉤(Akers・I-bar・T-bar)、アタッチメント(歯冠内アタッチメント・歯冠外アタッチメント・コーヌスクローネ・磁性アタッチメント等)がありますが、装置により使用されている金属の種類はさまざまです。義歯床に使用されている金属も同様です。さらに、義歯床粘膜面にティッシュコンディショナーや軟性裏装剤等の軟性材料が用いられていることがあります。 義歯洗浄剤の成分によっては、材質変化を引き起こす可能性があります。つまり、義歯洗浄剤の選択を誤ってしまうと、義歯が劣化する原因となるということです。だからこそ、義歯洗浄剤の使い分けが必要なのです。義歯洗浄剤の取扱説明書に記載された適応義歯材料を確認したうえで、義歯洗浄剤を選択する必要があります。義歯材料への影響2図9 酸系義歯洗浄剤フィジオクリーン 歯石くりん(ニッシン/モリタ)。歯石除去効果に優れる一方、チタンや銀合金に対しては金属の腐食、ティッシュコンディショナーに対しては物性変化が起きるため注意が必要。詳細はP.104も参照。図10 酸系義歯洗浄剤なのに金属に使用可能入れ歯爽快(和田精密歯研)は、クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸を独自配合(特許取得)した有機酸複合剤により、金属の種類を選ばず使用することができる。図8 次亜塩素酸系義歯洗浄剤(赤丸のみ該当)ピカ(松風)には、錠剤の酵素剤(青ピカ)と、週1回程度使用する顆粒のアルカリ-酸化剤(赤ピカ)の2種類が入っている。このうち、赤ピカは次亜塩素酸系義歯洗浄剤で、ステイン除去効果に優れる。表2 歯石くりんの義歯材料への影響材料影響備考床・裏装材人工歯○床用レジン○ノンメタルクラスプ用樹脂○軟質裏装材(シリコン系)○軟質裏層材(アクリル系)○ティッシュコンディショナー×金属材料コバルトクロム合金△30分以内の使用金銀パラジウム合金△チタン系×変色、くすみ歯科用銀ロウ×銀合金×(歯石くりんのパンフレットより引用)歯石くりんのパンフレットには「歯科材料への影響」と題し、使用可能な歯科材料が記載されている。47歯科衛生士 September 2016 vol.40

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