歯科衛生士 2017年3月
2/8

Illustration:佐々木 純、根岸美帆佐々生康宏Yasuhiro SASAOささお歯科クリニック口腔機能センター[山口県]院長歯科医師木村聖子Seiko KIMURAささお歯科クリニック口腔機能センター[山口県]歯科衛生士片山智子Tomoko KATAYAMAささお歯科クリニック口腔機能センター[山口県]歯科衛生士川脇梨菜Rina KAWAWAKIささお歯科クリニック口腔機能センター[山口県]歯科衛生士食塊を咽頭へ送る腔期口準備期で形成された食塊が舌の動きにより少しずつ後方の咽頭へ送り込まれます。この段階が、嚥下をスタートするきっかけとなります。3食塊を食道へ送る頭期咽食道入口部が開大し、咽頭に送られた食塊を咽頭周囲筋と奥舌で食道の入口へ絞りながら送り込むという、まさに「嚥下そのもの」が起こります。このとき、食塊が食道以外の器官に入り込むのを防ぐため、さまざまな器官がはたらきます。食塊を胃まで送る道期食嚥下された食塊が食道の蠕ぜんどう動運動(収縮・弛緩をくりかえし、食塊を移動させる運動)により、胃まで送り込まれます。食塊の逆流を防ぐため、ここでもさまざまな器官がはたらきます。54 「衛生士さん、うちのおばあちゃん、入れ歯を作ったら噛めるようになりますよね?」 在宅訪問中、とあるご家族からの質問です。この質問にあなたならどのように答えますか? 「そうですね。入れ歯を入れたら噛めるようになりますよ」と答えるか? 「入れ歯を入れても難しいかもしれませんね」と答えるか? あるいは「う~ん、どうでしょう。よくわかりませんね……」とお茶を濁すか。 そもそも「歯があるから咀嚼できる」のでしょうか? 食べることはすなわち、「咀嚼して嚥下すること」ですが、そもそも「咀嚼」「嚥下」(=摂食嚥下)とは、どのような運動なのでしょうか?  私たち歯科医療者は「噛める」「噛めない」の問題に対して、つい「歯はあるか、噛み合わせは合っているか」という視点から見てしまいがちですが、じつは、摂食嚥下運動には、歯だけではなく、口唇、頬、舌、軟口蓋、顎、唾液などさまざまな器官がかかわっています。 これらの器官の動きを含めた摂食嚥下のメカニズムを知っていれば、患者さんの「噛めない」という訴えに対し、歯だけではなく視野を広げて口腔内を観察できるようになるでしょう。また、「飲み込みにくい」という訴えに対して、その原因を見つけられる可能性が出てくるでしょうし、「ムセる」という訴えに対しても、ムセにくい食べ方や適切な食形態をアドバイスできるようになるかもしれません。 「噛める」「食べる」に深くかかわる専門職として、まずは摂食嚥下のメカニズムについて理解しておく必要があるでしょう。ここでは易しく噛み砕き、“咀嚼して”紹介したいと思います。「歯」以外の機能のはたらき、あなたは視えてますか?25歯科衛生士 March 2017 vol.41

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る