歯科衛生士 2017年4月
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“赤ちゃんのため” ならできる!たでめお禁煙指導埴岡 隆 福岡歯科大学口腔保健学講座・歯科医師谷口奈央 福岡歯科大学口腔保健学講座・歯科医師図1 禁煙の動機づけに使われた内容と禁煙行動との関係禁煙の動機づけに使用した24のフリップチャートの内容ごとに、縦軸に禁煙を試行した喫煙者の割合、横軸に禁煙の動機づけの指標となる「行動変容ステージ」が進行した喫煙者の割合をプロットした。行動変容ステージは、低い順に「無関心期」「関心無企図期」「関心企図期」「準備期」「実行期(行動期)」「維持期」の6段階で、ステージの進行度は初回と最終回の差による。(文献3を元に作成)〈引用文献〉1.厚生労働省.第4回「健やか親子21」の最終評価等に関する検討委員会 平成25年11月18日(月)開催会議 参考資料4 山縣委員提出資料2.http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000029842.html(2017年2月22日アクセス)2.Hanioka T, Ojima M, Hamajima N, Naito M. Patient feedback as a motivating force to quit smoking. Community Dent Oral Epidemiol 2007;35(4):310-317.3.Hanioka T, Tsutsui A, Yamamoto M, Haresaku S, Shimada K, Watanabe T, Matsuo T, Ojima M. Impact of various eects of smoking in the mouth on motivating dental patients to quit smoking. Int J Stats Med Res 2013;2:40-46.わが子のむし歯への影響にドキッ!歯科医院で、「患者さんご自身の健康や歯科治療のために」と禁煙指導しようとしても、なかなかうまくいかないことはありませんか? 本特集では、禁煙指導の1つとして、“赤ちゃんのむし歯につながる“という方向からのアプローチを提案します。トークに生きる研究データなどの最新情報を中心に、他院の取り組みもご紹介。患者さんとそのご家族に納得して禁煙してもらうために、一緒に学びましょう。(編集部)た禁煙指導木村美由紀Miyuki KIMURA江戸川区健康部健康サービス課小岩健康サポートセンター主査・歯科衛生士 筆者らは、2004年、歯科を受診する喫煙者に短時間で効果的に禁煙を勧める(動機づけ)方法開発の研究を行いました(厚生労働省がん研究助成金研究「医療施設受診喫煙者に対する禁煙誘導方法の確立に関する研究(浜島班)」分担研究)。喫煙と口腔の健康・歯科治療との関係を、「喫煙と歯の着色」「喫煙と口臭」など24種類の患者さん向けの説明用フリップチャートにまとめ、歯科医院35施設を受診した喫煙者497名を対象に、チャートを見せて禁煙を勧めた群(248名)とチャートを見せずに禁煙を勧めた群(249名)とで、禁煙を試みるかどうか、禁煙の動機づけにつながるかどうかを調べました2)。 図1は、チャートを見せて禁煙を勧めた群について、24の内容が患者さんの禁煙行動に与えた影響を示したものです。注目すべきなのは、「受動喫煙と子どものう蝕」が、禁煙を試みた(試行した)割合で2番目に高かったことです。また、禁煙の動機が高まった(行動変容ステージが進行した)割合も最高でした。 この結果から、「親になる」「孫ができる」は、禁煙の強い動機づけになることが推察されます。当時は、受動喫煙と子どものう蝕や歯周病との関係についての研究は始まったばかりで、実際に禁煙の動機づけに用いられたのは10%未満でしたが、今は、エビデンスが増えたため、より強く自信をもって禁煙の動機づけができるようになりました。倉治ななえNanae KURAJIクラジ歯科医院[東京都]院長日本歯科大学附属病院臨床教授・歯科医師禁煙を試行した喫煙者の割合行動変容ステージの進行度(%)301051525200(%)15202530354045510禁煙の効果受動喫煙と子どものう蝕受動喫煙と歯周病喫煙による創傷治癒の障害喫煙と歯肉膿瘍喫煙による歯の着色禁煙による歯周治療の効果喫煙と歯の喪失喫煙者の口蓋(ニコチン性口内炎)喫煙と歯周病喫煙による歯肉メラニン色素沈着喫煙と口臭喫煙と感染への感受性85歯科衛生士 April 2017 vol.41

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