歯科衛生士 2018年1月
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Fフッ化物1,500ppmF時代の活用法とその効果高濃度  配合歯磨剤まるわかり 二次う蝕は、再発性う蝕とも呼ばれ、修復物のマージンにおけるう蝕を指します。原発性う蝕病変と同様に、  「フッ素(F)」は、天然に存在する元素のひとつで、原子番号9、原子量19.0のハロゲン系の元素です。以前は、フッ化物、フッ素化合物に対しても特に区分けせず“フッ素”という言葉を使っていましたが、現在では、国際純正・応用化学連盟(IUPAC)による「無機化学命名法」(1990年)に基づき、元素名として使用する場合のみ、“フッ素:uorine”とし、“フッ化物イオン(F-):uoride ion”が含まれる化合物は“フッ化物:fluoride”と区別するよう定められています。 水に溶けたときにマイナスイオンになる無機の物質を“~化物:…ride”といいます。たとえば、う蝕予防に使うフッ化ナトリウム(sodium uoride, NaF)は、水の中で薄い濃度で溶けている状態ではF-(=フッ化物イオン)のようにマイナスイオンの状態で存在“表面病変”として発現するため、エナメル質と同様のう蝕予防を行うことが重要です10)。そのうえで、二次するので、NaFはナトリウムのフッ化物だということがわかります。 また、患者さんから質問されることがあると思いますが、フライパンなどに使用される「フッ素樹脂加工(テフロン8加工)」が、歯科に利用するフッ化物とは別物である11~13)のもフッ素? フッ化物? フッ素樹脂とはどう違う?化学的性状が非常に安定した有機の“フッ素化合物:uoro compound”でF-のようなマイナスイオンの状態には変化しないからです。 本稿では、フッ素元素は“フッ素”、それ以外では原則として“フッ化物”を使っています。二次う蝕や象牙質う蝕予防にも効果が期待されるフッ化物の種類別特徴フッ化物の種類特徴フッ化ナトリウム(NaF)塗布した瞬間からフッ化物イオンが歯の表面に作用するため、う蝕予防効果はMFPより高いといわれている。モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)*唾液の作用でゆっくりフッ化物イオンに変化するので、1,000ppmであっても小児に安全に使用できるとされる。フッ化第一スズ(SnF2)*バクテリアに対し抗菌作用があるため、ミュータンス菌レベルが高い人に効果的。ただし長期使用では、スズイオンが歯面に着色する場合がある。スズイオンは無機物質なのでホワイトニングでは白くならない。AQ&AQので、一部ご紹介します。う蝕予防効果が6%アップ! WHOのテクニカルレポート3)では、1,000ppmを超える濃度のフッ化物配合歯磨剤では、濃度が500ppm上昇するごとに臨床効果が6%増加すると述べられています。6歳以上のう蝕リスクの高い人に有益 また、米国国立疾病管理予防センター(CDC)の報告4)では、「フッ化物濃度1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤は、1,000~1,100ppmに比べわずかにう蝕予防効果が高い」とされ5~8)、「6歳以上のう蝕リスクの高い人にとって、1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤は有益であろう」と述べられています。若年永久歯列で9.7%う蝕予防効果が高い さらに、ウメオ大学(スウェーデン)が行ったフッ化物配合歯磨剤のシステマティックレビュー研究9)によれば、905の文献から抽出された基準を満たす54の論文から、DMFS/Tまたはdmfs/tにより評価した結果、「1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤は、1,000ppm歯磨剤に比べ、若年永久歯列にとって、9.7%予防効果が高いエビデンスで認められた」と報告しています。 このように、海外では1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果(=少なくとも2年後にう蝕が新たに発生する割合を少なくできる等)が、同1,000ppmに比べ優位に高いことが多くの研究で裏付けられ、ISO規格である1,500ppmの推奨へつながってきたと思われます。*現在、日本で手に入る上限は1,000ppm。29歯科衛生士 January 2018 vol.42

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