歯科衛生士 2018年3月
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 脳性麻痺は、受胎から生後4週までに脳に障害を受けて生じる疾患です。後述のとおり、身体の動き方や筋肉のこわばりの強さ(筋緊張)に特徴があります。主な原因は、早く小さく生まれること(未熟児など)、新生児仮死*1などの出生時などで起こる脳への酸素不足、血管の未熟性や低酸素・外傷などによる脳出血、脳炎・髄膜炎などの感染症、脳形成異常*2などです。 頻度は、生後4週までの障害としても全出生の500人に1人、有病率も1,000人に1~2人と言われています。3歳までとするとさらに多くなります。特別支援学校(肢体不自由)や重症心身障害児者施設でみる疾患には、染色体異常や先天異常、二にぶんせきつい分脊椎*3、筋ジストロフィー*4などがありますが、全体の半分以上は脳性麻痺が占めています。 なお、生後4週以降に脳炎などに罹患し後遺症が残った場合でも病態が同様であることから、本稿では障害時期を3歳頃までとしてお話しします。生後まもなくの脳の障害で、運動や姿勢に不便が生じる渥美 聡 東京都立府中療育センター小児科・医師*1 新生児仮死:出生時に胎盤やへその緒の異常、子宮破裂などが起こって、赤ちゃんの脳が酸素不足になり、脳の障害を受け仮死状態で生まれてくること。*2 脳形成異常:胎児期に脳が作られる段階で、赤ちゃんがウイルスなどの感染にかかったり、遺伝子の異常が生じたりして、脳が正しく作られず、障害を持って生まれてくる状態。*3 二分脊椎:遺伝子の異常などで背骨の真ん中が融合不全のため、脊髄が脱出してしまう疾患。それにより足の麻痺などを生じる。一般に知的障害はほとんど認めないが、脱出している部位が首に近いほど、寝たきりなどになり症状は重く、知的障害もともなう。*4 筋ジストロフィー:全身の筋肉が徐々に壊れていく疾患。遺伝子の異常などが原因。生後は問題なくても、年齢が進むにつれ徐々に症状が現れてくる。知的障害はともなわないことも多いが、福山型筋ジストロフィーは知的障害をともない、進行も早く、幼児期~学童期に寝たきりになるケースも多い。45歯科衛生士 March 2018 vol.42

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