歯科衛生士 2018年3月
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ウイルスや細菌の運び屋にならないように ウイルスや細菌の感染経路はさまざまなものがありますが、使用済み器具に関しては「接触感染」の対策が必要です。訪問診療において診療室と大きく異なるのは「器具の使用後すぐに感染対策ができない」ということです。そのため、使用済み器具の管理には厳重な注意が必要です。 管理するうえで起こりうるリスクとして、切創などによる術者へのウイルス感染と、術者や器具を介して起こる患者さんから患者さんへの多剤耐性菌の伝搬が考えられます。つまり、訪問診療において念頭におくべき病原体には「血液媒介関連ウイルス」と「多剤耐性菌」があるのです。 表1に示すように血液媒介関連ウイルスは、私たちの細胞内に寄生する場合があり、多剤耐性菌は、多くの抗微生物薬(抗生剤)が効かなくなった細菌のことです。 これらはヒトや器具を介して付着、定着、さらに細菌は体内においてもバイオフィルムを形成することがありますが、健康な方の場合、身体の中に入ったり、皮膚や粘膜の表面に付着しても、すぐに病気になるわけではありません。しかし、身体の抵抗力が落ちている高齢の患者さんや在宅患者さんなどは感染症にかかることがあるため、1日に何軒もの患者宅を回ることもある私たちは注意しなければならないのです。特に訪問現場は、診療室の環境とは大きく異なります。たとえば、一人でトイレに行くのが難しい患者さんの場合、ベッドサイドにポータブルトイレなどが設置されていることも多くあります。「その横で診療する」ということを念頭におきましょう。 それでは、訪問診療では器具に関して具体的にどのような感染対策をすべきなのか、次ページからみていきましょう。使用済み器具の「接触感染」が課題術者と患者さんを守るため、できるものはディスポーザブルタイプにし、できないものは、感染リスクを下げた状態で医院に持ち帰り、診療室と同じ感染対策を行いましょう。A角田愛美 歯科医師オートクレーブがないけど、器具の感染対策はどうするの?Q4ヒトや器具を介して感染するウイルスや細菌に注意主な血液媒介関連ウイルス●B型肝炎ウイルス(HBV)●C型肝炎ウイルス(HCV)●ヒト免疫不全ウイルス(HIV)主な多剤耐性菌●メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)●バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)●バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)●多剤耐性緑膿菌(MDRP)●多剤耐性アシネトバクター属(MDRA)●カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)表1 主な血液媒介関連ウイルスと多剤耐性菌歯科衛生士 March 2018 vol.4260

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