歯科衛生士 2018年3月
6/8

すぐに洗浄、滅菌できないためグローブやフェイスシールド、エプロンなどの個人防護はディスポにする吸引器を用いる際はディスポの排唾管を使う吸引器を借りた場合、片付け方は患者さんのお宅に従うすぐに洗浄、滅菌できないから…… 歯科訪問診療での感染対策の基本的な考え方は、診療室と同様にスタンダードプリコーション(標準予防策)で行います。しかし、診療室と違い、訪問の現場は、すぐに洗浄、滅菌ができる環境ではありません。そこで、衛生面、感染対策を考慮し、できるものはディスポーザブルタイプ(以下、ディスポ)にする方がよいでしょう。また、廃棄可能なため、片付けが楽なことも利点となります。 梅津らの報告1)によると、口腔ケアは唾液や血液、分泌液など湿性生体物質に触れる機会が多く、血液を含んだ飛沫が考えられることから、グローブやフェイスシールド、エプロンを含めた個人防護具の必要性が明らかにされています。前頁で示されていたように、術者が汚染を媒介し感染源になる可能性があることも考慮して器具などを準備しましょう。ガーゼやワッテ、アルコール綿も個包装が望ましいです。 たとえば、私たちが使用するグローブは患者さんの口腔に直接触れます。また、歯ブラシでのブラッシングは口腔からの唾液や血液による飛沫が考えられ、エプロンや近くにある物品は汚染されることが予測されます。これらグローブやエプロンのようにディスポ製品があるものや、含嗽や口腔清掃の際に使用する物品で自宅管理しない排唾管などはディスポにすることが望ましいでしょう(図1)。 また、診療器具を置くバットも、ディスポのペーパートレー(図2)がお勧めです。感染対策はもちろん、患者さんにとって不快となり得る診療器具の金属音を軽減できます。 歯科治療や口腔清掃が終わった後の片づけの際には、2月号(P.61)で紹介した使用後のディスポ製品など汚染物を廃棄する袋を携帯すると便利です。吸引器を借りるときのくふうとマナー 口腔清掃時、吸引が必要な場合があります。特に、ブラッシングはバイオフィルムを破壊する行為であり、口腔内に細菌や唾液が飛散します。 訪問先のお宅で痰の吸引に使う吸引器(図3)を見かけることがあると思いますが、残念ながら、基本的に歯科用バキュームを装着することはできません。もし、口腔内用吸引カテーテルの準備があればお借りすることもできますが、口腔ケア用に作られた吸引器は吸引力が弱いことがあります。そこで、形状の細い排唾管を用いると、吸引力が上がります。その際には、図1でご紹介したディスポがお勧めです2)。粘膜を損傷しにくい軟らかさ・形状で、奥まで吸引できる製品が望ましいでしょう。また、くふう次第で医科の吸引器への装着も可能ですが、同様に吸引圧に注意が必要です。 そして、借りた際は使用後の片付け方を教えてもらいましょう。吸引器を設置されているお宅は訪問看護師から指導を受けていますので、私たちもそのルールに従うことが大切です。基本はディスポ!村田 碧 歯科衛生士図2 ペーパートレー使用する器具や口腔清掃時の歯ブラシなどの清掃用具もペーパートレーの上に置くようにする。図3 吸引器ポータブル吸引器ミニックW-Ⅱ(新鋭工業)。ケア時に口腔内に飛散した細菌や唾液を吸引する。吸引器がない場合は適宜拭き取り、細菌回収につとめる。図1 ディスポの排唾菅フレクソL(ヨシダ)。自由自在に曲げて使用できるディスポの排唾管。内部にワイヤーがあり、チューブを好きな角度に曲げられるため、吸引しながらのブラッシングも可能。先端チップも軟らかいため、粘膜を傷つけにくく、不快感を軽減できる。61歯科衛生士 March 2018 vol.42

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る