歯科衛生士 2018年4月
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寺本浩平Kouhei TERAMOTO医療法人社団LSM寺本内科歯科クリニック[東京都]理事長・歯科医師日本大学歯学部摂食機能療法学講座兼任講師Illustration:コージー・トマト 診療室での診療と同様に、歯科訪問診療においても口腔ケアはたしかに重要な役割を果たします。しかし、たとえば脳梗塞やパーキンソン病を抱えている患者さんの口腔内には麻痺や運動不全がみられるなど、口腔内の状態は人によってまったく違います。口腔内が乾燥しているか、湿潤しているか、舌苔の有無などに応じて、選択すべきケアの方法は異なるため、その対応は一律ではありません。ケアグッズもさまざまなタイプのものがあるため、「どれをどの患者さんに使えばよいのか」という難題が浮上します(図1)。患者さんに必要なものを選ばなければ意味がありませんから、専門職として個々の口腔内の状態を評価したうえで、適切な方法を選んで口腔ケアを行うことが重要です。 このような背景があるため、歯科訪問診療時の口腔ケアは難しく捉えられている傾向があるように思います。 ケアがすぐわかる! チャート一人ひとりの状態を評価したうえで、適切なケアの方法を選ぶ 歯科訪問診療という言葉を聞いて、皆さんは何をイメージするでしょうか。最近では、ポータブルユニットの購入や、摂食嚥下障害への対応が注目を集めている印象があります。また、「食支援」という言葉が先行し、食べる機能の評価の重要性が叫ばれるようになりました。た歯科訪問診療では、やっぱり口腔ケアが大事そこで今回は、簡便な評価によって患者さんに合う口腔ケアの方法を選ぶのに役立つ、筆者らが考案した「口腔ケアフローチャート」についてご紹介します。しかに、歯科の立場から食べる機能を診ることは重要です。しかし、実際に現場で歯科訪問診療を行っていると、食べる機能を診るよりももっと前に、歯科医療者としてやらなくてはならないことが実に多いことに気付かされます。その代表的なものの1つに、患者さんの口腔内の状態に応じた、適切な専門的口腔ケアの提供が挙げられます。 口腔ケアを専門に扱うのは歯科医療者であることに変わりはないのですから、今一度原点に戻って、口腔ケアに対する知識を深めていただければと思います。図1 たくさんあるケアグッズ、どれを誰に使う?たとえば同一シリーズでもさまざまなケアグッズがあるため、一人ひとりの患者に合わせて選ぶことが必要となる。79歯科衛生士 April 2018 vol.42

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