歯科衛生士 2018年6月
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SPEAKER’S ARTICLEDH第 ホール410/6(SAT)午後 「咬合」ってよくわからないという人は多いでしょう。重度の叢生患者さんでも、「特に困らない」とおっしゃいます。重度の歯周炎で動揺する歯が何本もあるのに、「生活に支障はない」と抜歯を拒む患者さんもいます。左に示したCASE1、2の患者さんも歯科的に問題はいくつかありますが、本人は特に問題を感じていないと言います。このような歯列を目にすれば、歯科医療者としては「その咬み合わせで大丈夫なの!?」とどうしても思ってしまいます。 臨床では、顎模型のような咬合の人はまず見当たりませんし、完璧な歯並びの人はほとんどいません。また、叢生、補綴物、咬合面の傷、咬頭の喪失などは多くの成人患者さんに見られます。もしそれらが「悪い咬合」とみなされるならば、ほとんどの人があてはまってしまいます。けれど、実際には咬合が原因で歯を失っていく人はそう多くありません。人はさまざまな問題を許容し、食べる、しゃべる、笑うという口腔の機能を果たしています。 本編でもご紹介しますが、どうやら咬合には必ずしも「悪い咬合」とは言えない、幅広いグレーゾーンが存在するようです。となると、咬合を診る際に重要なことは、噛み合わせの形態修正だけではなく、患者さんが長期にわたり毎日の生活を問題なく過ごせるようなサポートになるのではないでしょうか。 そもそも、成人してから叢生や開咬になることはそう多くありません。その咬み合わせは小児期に決まり、形態の決定には呼吸や舌癖が大きく影響すると考えられています。もし小児期のうちに「良い成長」を促すことができたら、一生「悪い咬合」で悩まなくて済むかもしれません。それって、私たち歯科衛生士の出番じゃないですか! また、歯は毎日使っていれば、だんだんすり減って、結果、咬合は変化していきます。その変化に私たちが気付けなければ、「悪い咬合」に向かってしまうかもしれません。こうした問題の始まりを最初に気付くのも、メインテナンスを担当する歯科衛生士でしょう。 そこで本特集では、咬合に対する捉え方についてあらためて見直すとともに、「悪い咬合」になる前に注意しなければいけないことについてお伝えしましょう。咬合には、幅広いグレーゾーンが存在する咬合のトラブルの予兆に気付けるのは、歯科衛生士!杉元敬弘 スギモト歯科医院・歯科医師井上 和 ぶっちゃけK’s seminar主宰・歯科衛生士のサイン井上 和Kazu INOUEぶっちゃけK’s seminar主宰歯科衛生士杉元敬弘Norihiro SUGIMOTOスギモト歯科医院[京都府]院長・歯科医師Illustration:キムラみのる、ひらたともみこのままでいい? 、 咬合第8回 日本国際歯科大会2018SPEAKER’S ARTICLEQDT ホールD10/7(SUN)午前第8回 日本国際歯科大会201847歯科衛生士 June 2018 vol.42

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