歯科衛生士 2018年6月
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会話中の反応から意識レベルをチェック 歯科衛生士が単独訪問した際に、患者さんの容態が急変することもあります。私たちは訪問したその日その時の患者さんの全身状態を確認し、診療後も問題がないか確認してから訪問先を後にしなくてはいけません。 5月号で紹介した医療面接の際の方法で、意識レベルを確認します。判定基準は、Japan Coma Scale(JCS)を用います(表1)。意識障害がある患者さんの場合、口腔ケア中に誤嚥する恐れがあるので、より注意深い観察を必要とします。 JCS1桁の場合、誤嚥を生じても典型的症状、例えば唾液が喉に流れてもむせこまない、喀出しないなどを示さないことがあります。口腔ケア時にも誤嚥させない方法で注意深く観察することと対応が求められます。2桁、3桁では、脳血管疾患後遺症や認知症の場合、原始反射に対して、より注意が必要です。意識レベルが低い際は、喉の感覚も低下していると考え、誤嚥させないことが大切です。バイタルサインから患者さんの状態を読み取る では、患者さんの全身状態はどのように確認するのでしょうか。他覚所見の基本となるのが、バイタルサイン(Vital signs)です。①呼吸数、②脈拍やその性状、③血圧、④体温の4つの生体情報を指し、患者さんの反応や呼吸状態を目で見たり、手や腕に触れながらチェックします(バイタルチェック)。生命(Vital)維持にかかわるもっとも重要で、基本的な徴候(sign)1)で、訪問医師や訪問看護師などの医療職との共通した医療情報となります。①呼吸:血液中の酸素量から呼吸の状態をみよう 患者さんの反応を把握できたら、呼吸状態を確認するために経皮的動脈酸素飽和度(SpO2:血液中に含まれる酸素量)を測定します(図1)。個人差はありますが、基準値は96~99%とされ、90%以下の低値を示したり、平常時より3~4%以上の大幅な低下を認めた場合は血中に酸素が十分にいきわたっていない状態であり、呼吸不全や誤嚥が疑われます。医療面接を終えたら、もう診療を始めていいですよね?Q9必ず全身状態を観察・把握しながら、診療を進めましょう。A万が一に備え、ケア前後のリスク管理は必須!有友たかね 歯科衛生士図1パルスオキシメータHPO-1600-FP(オムロンヘルスケア)ケア中はSpO2を測定し続ける。誤嚥の発生時には早期対応が必要となるため、モニタリングとしての有用性が高いといわれている。表1 Japan Coma Scale(JCS)Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態(delirium、confusion、senselessness)1意識は清明だが、今ひとつはっきりしない2見当識障害がある(日付、場所が言えない)3自分の名前、生年月日が言えないⅡ.刺激すると覚醒する状態(stupor、lethargy、hypersomnia、somnolence、drowsiness)10普通の呼びかけで容易に開眼する20大きな声または体を揺さぶることにより開眼する30痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼するⅢ.刺激をしても覚醒しない状態(deep coma、coma、semicoma)100痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする200痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる300痛み刺激に全く反応しないⅠは1桁、Ⅱは2桁、Ⅲは3桁の点数で評価し、意識が清明な場合は「0」となる。また、不穏状態であればR(restlessness)、失禁があればI(incontinence)、無動性無言症、失外套症候群であればA(akinetic mutism,apallic state)と表す。歯科衛生士 June 2018 vol.4266

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