歯科衛生士 2018年6月
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表2 異常呼吸の種類と状態異常の種類呼吸状態呼吸量の異常呼吸回数の異常減少無呼吸(10秒以上の無呼吸)徐呼吸(9回/分以下)増加頻呼吸(25回/分以上)一回換気量の異常減少低呼吸(低換気)増加過呼吸(過換気)周期的な異常cheyne-stokes呼吸*呼吸リズムの異常不規則な異常持続吸息性呼吸群息呼吸あえぎ呼吸(下顎呼吸)失調性呼吸(Biot呼吸)その他体位の異常起座呼吸*cheyne-stokes呼吸:小さい呼吸から一回換気量が徐々に増え、大きな呼吸となったあと、一回換気量が徐々に減っていき10~20秒程度の無呼吸が起こり、ふたたび同様の周期で交互に繰り返される呼吸。表3 成人における血圧値の分類(mmHg)分類収縮期血圧拡張期血圧正常域血圧至適血圧<120かつ<80正常血圧120-129かつ/または80-84正常高値血圧130-139かつ/または85-89高血圧Ⅰ度高血圧140-159かつ/または90-99Ⅱ度高血圧160-179かつ/または100-109Ⅲ度高血圧≧180かつ/または≧110(孤立性)収縮期高血圧≧140かつ<90(文献4より引用) 口腔ケア中もモニタリングし、2%の低下を認めたら、いったん手を止め、患者さんに深呼吸を促し呼吸を整え、数値の回復をみます2)。このとき、どのくらいの呼吸数で平常時に戻るのか、また処置開始からどのくらいの時間で数値に変化が出るのかを観察します。そうすることで、全身へ負担のかからない開口時間が把握でき、以降も安全に口腔衛生管理を実施することができるのです。呼吸数や呼吸の仕方にも注目して ただし、SpO2の値はいつもと変わらなくても、呼吸状態が異なることもあります。異常呼吸の種類は表2に示すように、さまざまなものがあります3)。 まず、呼吸状態の深さと呼吸数をみましょう。正常呼吸数は年齢によっても違いますが、成人で15~20回/分です。体位や患者さんの肩が上がり、浅い呼吸を頻回にしている状態がみられたら、頻呼吸を疑います。呼吸が安定しない場合は、開口すると呼吸リズムが乱れるため、吐くほうが弱ければ吐く時に、吸うほうが弱ければ吸う時に声かけをして意識させながら呼吸を促します。SpO2と呼吸の状態をモニタリングしながら、口腔ケアを実施しましょう。②脈拍:脈拍回数、性状からも体調がわかる パルスオキシメータには脈拍も表示されるので、併せて確認します。脈拍の性状は、橈とう骨こつ動脈、総頚動脈、上腕動脈の3つのいずれかから手指で測定し、脈圧(脈の硬さ)と脈の打ち方を確認します。通常60~80回/分ですが、100回以上の異常に早い脈(頻脈)や数値の乱れがある場合は、発熱、貧血、心不全や脱水などを疑います2)。 たとえば、脈の打ち方が一定のリズムでなく、飛んでしまうなど不規則な場合、不整脈があることがわかります。また、100回/分のような頻脈は100m走を思い切りダッシュした後の心臓の動きと近いため、息切れのような呼吸異常がともなうことがあります。逆に、40回/分のように遅い脈(徐脈)は心不全が疑われ、体を動かしたタイミングで意識消失することも考えられます。患者さんを動かす前に安静時の状態を診ることが重要です。③血圧:動作とともに変動することを意識しよう 高血圧の持続は血管障害につながりますので、平常時から血圧を記録しておくことが大切です。表3に示すように、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以下の場合(軽度高血圧)や、平常時より30mmHg以上だと注意が必要なので、歯科医師への報告が必要です。在宅患者さんの場合は訪問看護師がバイタルチェックをしているので、報告を兼ねて相談するのも他職種連携につながるでしょう。 ケア時に注意したいのは、血圧は姿勢を変えただけでも変動する点です。たとえば、寝ている状態から急に起き上がると血圧が下がることを「起立性低血圧」といい、脳卒中などの脳血管障害患者に多くみられる症状です。 また、食事をした後に血圧が下がる「食後血圧低下」もあります。健常な私たちでも食後に眠くなることがありますよね。食後は胃周囲に血流が集まってくるため、血圧が低下しやすく、意識消失することもあるのです。反対に、血圧を上げる要素としてストレスがあります。この場合、高血圧脳症や狭心症のリスクが考えられます。67歯科衛生士 June 2018 vol.42

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