歯科衛生士 2018年6月
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山口秀紀Hidenori YAMAGUCHI日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座准教授・歯科医師TOPIC小児患者さんの救急対応マニュアル 一般の歯科診療所での小児歯科診療において、救急対応が必要となる頻度はけっして多くはありません。しかし、万が一緊急事態が発生した場合、その被害の大きさは計り知れないものがあります。最悪、患者さんが命を落とす危険もあり、昨今報道された小児歯科医院での死亡事故が記憶に新しい方も多いと思います。 こうした歯科医院での緊急事態に対応するため、救急処置に関する講習会を受講される歯科衛生士さんも増えてきました。しかし、講習会の多くは、街中での成人救急を主な対象としたもので、小児への対応については「小児、幼児、乳児の場合はこうしましょう」とオマケ程度に補足されるだけのことも少なくありません。 そこで今回は、小児歯科診療を担当する皆さんの万が一に備え、未就学児を中心とした小児の特性と小児歯科診療の特殊性を考慮した救急対応について、解説します。Illustration:ハラアツシ緊急時の対応を院内全体で確認できる小児の救急対応早わかりシート今回ご紹介したフローチャートに、解説を加えて1枚のシートにまとめました。院内全体で確認し、緊急時対応にご活用ください。小社ウェブサイトからはPDF版がダウンロードできます。とじ込み&DL付録いざという時に慌てない!TOPIC 78〜84ページより   ﹇監修﹈山口秀紀﹇イラスト﹈ ハラアツシとじ込みDL付録本シートを切り離す、またはPDF版をプリントして、院内で小児が急変した際の救急対応や、その備えにご活用ください。使い方&緊急時の対応を院内全体で確認できる 小児の救急対応早わかりシート歯科衛生士2018年6月号とじ込み付録 ©クインテッセンス出版㈱小児の救急対応早わかりシートいざという時に慌てない!チャートに沿って急変の原因を探り適切に対応できるようにしましょう。回復したとしても診療は終了し、歯科医師の判断を仰ぎましょう。[監修] 山口秀紀 (日本大学松戸歯学部歯科麻酔学講座 准教授)すぐ行うこと患者さんの様子から急変の原因を探る原因ごとに対応する一次救命処置意識があるか?あるないどんな様子か?どんな様子か?投与薬物の投与を中止する、除去する口腔内の器具を除去する舌根沈下による気道閉塞の疑いアナフィラキシーショックの疑いアドレナリン筋肉注射*エピペン®の使用水平位でない場合、水平位にする嘔吐がある場合、①顔を横に向ける②嘔吐吸引の準備③嘔吐物吸引動脈路を確保する*(可能であれば)気道を確保し、酸素を投与するじんましんが出ている皮膚に発赤がある顔面浮腫がみられる気道異物による気道閉塞の疑い苦しそうにしている顔色が悪い泣かないいびきをしている奇異呼吸がある救急隊へ引き継ぎを行う*歯科医師が行う。患者プロフィール(年齢、性別、保護者など)事故発生時の状況救急隊到着までの変化 (バイタルサイン、反応、嘔吐など)院内での処置内容 (異物除去、心肺蘇生、投与薬剤、AEDなど)患者背景(既往疾患やアレルギーなどの全身情報)保護者に関する情報心肺蘇生を行う、AEDを使用するあらかじめ役割分担を決めておこう!いざという時に迅速に対応するために、院内でスタッフの役割を決めておきましょう。胸骨圧迫人工呼吸AEDユニット上での胸骨圧迫ユニット上で行う場合は、ユニット下にいすを置くとたわみが防げる胸骨圧迫のポイント胸の厚さの約1/3沈み込む強さ100~120回/分の速さ30回奇異呼吸一次救命処置[例]院長・歯科医師●患者さんの観察・評価●対応の決定歯科衛生士●院長の指示にしたがい必要な物の準備●モニタの装着●バイタルサインの測定受付など●保護者の対応●119番通報胸の真ん中乳児は2本指、幼児では体格 に合わせ、片手または両手で呼吸が困難になった血圧が低下してきた意識レベルが低下してきた反応がなくなった反応がなくなった気道を確保する用手気道確保(頭部後屈あご先挙上法)異物を除去する幼児:背部叩打法腹部突き上げ法(ハイムリック法)乳児:背部叩打法胸部突き上げ法呼吸が止まった息を吸ったとき:胸が下がりお腹が上がる()息を吐くとき:胸が上がりお腹が下がる()119番通報する救急であること医院名何が起きたのか現在の患者さんのようす医院の住所、目標となる建物医院の電話番号、連絡者の氏名背中にタオルなどを入れると、用手気道確保が行いやすい。乳児や頭部の大きい幼児へ行う場合用手気道確保(頭部後屈あご先挙上法)舌根で気道が塞がっている頭を後ろに、あご先を挙げて気道を開く●水平位の状態で咽頭部に異物が落下した場合は、上体を起こさない●腹部臓器損傷の危険性があるため、腹部突き上げ法は行わない●異物が気管に入らないように必ず頭を下げるユニット上での腹部突き上げ法仰臥位で、ヘソとみぞおちの間に手を当て、上方向に瞬間的に突き上げる背部叩こう打だ法側臥位にして肩甲骨間を手のひらで数回叩打する●ひとつの方法で効果が得られなければ、これらの方法を組み合わせて行う●回数や順序は問わない背部叩こう打だ法うつ伏せにして、しっかりと下顎を支え、頭を下げた状態で、肩甲骨間を手のひらで4~5回強く叩く胸部突き上げ法仰向けにして、後頭部を支え、頭を下げた状態とし、指2本で胸の真ん中を強く圧迫する幼児●これらの方法を交互に数回行う乳児またはpⅠ_DH06_Furoku1_CC2014.indd 12018/05/15 12:35歯科衛生士 June 2018 vol.4278

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