歯科衛生士 2018年7月
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術前にすべき5つのステップ インプラント治療を行うと言っても、すぐにインプラントを埋入できるわけではありません。インプラント治療は「途中でやめる」ということができないため、事前に治療内容等をしっかり共有しておく必要があります。埋入手術を行う前に、口腔内の環境を整え、そして治療を安全に進め、治療後もメインテナンスへ通い続けてもらうためにも患者さん自身の情報の把握や説明、歯周基本治療を行う必要があります。手術の前に右の5つのステップをクリアにしておきましょう。既往歴や服薬情報をもれなく聞き出す まず、患者さんにインプラント治療を受けてもらうことができるのかどうか、私たちが患者さんのことを理解しなければなりません。全身的疾患の有無、薬の常用の有無、日常生活における習癖など、ささいなことが治療の成功率を下げてしまいます(図1)。 患者さんは、問診票を記入する際に、無意識に頭の中で情報を選別し、歯科だから医科の内容は関係ないと思い込んで記さない方もいます。そのため、必要な情報の取りこぼしが出てきてしまうのです。取りこぼしを防ぐポイントは、「問診を必ず聴き返す」こと。この際、問診の質問と同じ文章を読まず、より具体的な言葉に置き換えて聞くことが大切です。インプラント治療前の説明は、患者さんへの種まき期間。ここでしっかり患者さんと情報を共有し、理解を獲得しておくと、あとのメインテナンスもスムーズに行えます。Term1“成功”のイメージを明確にし共有する たとえば、「アレルギーがありますか?」という質問の場合、「花粉症はありますか? いつの季節の花粉症ですか?」など、アプローチを変えます。内容を具体化することにより、情報を得ることができるのです。生活習慣へも目を向ける また、日常生活の習慣の中にも、大切な情報が隠れていることがあります。たとえば、プールでトレーニングを習慣的にされている患者さんがいたなら、プールの水による感染などを防ぐため「手術後しばらくは、プールに行かないでください」と伝えなければなりません。 では、「週に一度、サックスのレッスンを受けていて、家図1 抗凝固剤投与による術後出血患者は抗凝固剤を服用していたため、術後に出血が起きた。サージカルパックを使用して止血した。サイナスリフトの後に口腔内に過剰な圧を加えたため、口腔と上顎洞が交通した。図2 口腔内圧による上顎洞の交通患者さんのリスクを把握するStep1□ 1.患者さんのリスクを把握する□ 2.患者さんにインプラント治療にかかる   負担を知ってもらう□ 3.治療の成功に必要な条件を共有する□ 4.炎症を改善し、信頼関係を構築する□ 5.術後のメインテナンスの必要性を   伝える5Steps侵襲性のある治療を行える口腔内環境を整える歯科衛生士 July 2018 vol.4246

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