歯科衛生士 2018年8月
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“忙しさ”を乗り切るサポーティブなメインテナンスケースでみる働き盛りの時期にメインテナンスが叶わず、歯周病が悪化していたFさん症例をとおして、“忙しい”時期にメインテナンスに通っていただくことがいかに大変か、その一方で定期的に管理することがいかに大切かをみていきましょう。●3年前まで近所の歯科医院に行っていたが、不安になって転院●前医でTBIを受けたことがあり、起床時と夕食後磨いていた全身既往歴なし全身現病歴なし口腔から得られる情報●上顎前歯ブリッジは噛むたびに動き、脱落しそうな状態●下顎前歯部以外に5mm以上の深い歯周ポケットと出血がある●歯肉縁下歯石の沈着が多量にある●唾液の量は多い●歯肉において炎症のないところは、付着歯肉の幅も厚く、回復力がありそう診断広汎型慢性歯周炎治療計画●歯周基本治療を行い、再評価後に検討する●保存ができない2177は抜歯●失活歯の再治療●歯冠修復後に上顎に義歯を作成し、咬合機能を回復させる1Case年齢・性別56歳・女性(初診時2009年3月)職業自営業(自宅で図面を書いている)主訴上顎前歯ブリッジ、右下臼歯ブリッジ、7が動く(特に上顎前歯は1年前から動き方がひどくなった)歯科既往歴●子どもの頃から歯が悪かった●上顎前歯は中学生の頃ブリッジにした●4年前に上顎に義歯装着●4は4ヵ月前に自然脱落してそのまま初診時 (2009年3月)患者さんのDATA1 Fさんは子どもの頃から歯科治療を受けていたものの、被せた物が外れたり、欠けたりして結局抜歯になることが多かったそうです。「治療後にトラブルが起こるのはしょうがない」という認識だったのかもしれません。また、自営業ということで、仕事と生活が密着していて、セルフケアも十分できていなかったと思われます。実際、歯の動揺がみられるのに「まさか自分が歯周病だとは思っていなかった」とFさんは言っていました。当院に来る前も歯科に行っていたにもかかわらず、う蝕や歯周病の原因に関する理解が乏しかったことが歯の喪失を招いてしまったようです。歯科医院側の説明不足は否めませんが、働き盛りの生活の中で患者さんも医療者側の話を聞く体勢になかったことも想像できます。 ここからわかることは、たとえTBIを行っていたとしても、磨き方のハウツーだけでは病状の進行を止めることができないということです。したがって、歯科医院側は、働き盛りというライフステージを意識したうえで、患者さんに自分の病状を知ってもらい、原因除去のためにセルフケアや食生活の見直しが必要であること、そして自分で治す疾患であることをしっかり理解してもらうことが大切です。Fさんも「最初に『歯周病を治すためにがんばることが必要だけどできますか?』と先生にガツンと言われてよかった」と後日語っていました。歯科に通院していたにもかかわらず、歯周病の自覚がなかった歯科衛生士 August 2018 vol.4240

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