歯科衛生士 2018年9月
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遺伝子によって細菌の種類や数を同定できるようになり、これまでとは段違いのスピードでマイクロバイオロジーの研究が進み始めました。口腔、プラーク中に生息する細菌たち(細菌叢=マイクロバイオーム)についても研究が進められ、歯周病病因論にも新しいページがどんどん追加されています。これを受け、歯周治療はどう変えていくべきなのでしょうか? もしくは、変える必要はないのでしょうか? 本稿では、“細菌叢を変化させる”ことに着目した歯周治療を実践されている辻村 傑先生に、「マイクロバイオーム時代のSRP」を前後編にわたって紹介いただきます。(編集部)辻村 傑Suguro TSUJIMURAつじむら歯科医院[神奈川県]院長・歯科医師現場発! 細菌叢を見据えたこれ [前編] インフェクションコントロールとしてのSRPContents P.30マイクロバイオームを見据えた日常臨床を行えていますか?P.32PART1 歯周病病因論のいまP.34PART2 マイクロバイオームの視点から、これまでの歯周治療を見直してみるP.36PART3 現場発! マイクロバイオーム時代のSRPKey1:最低限の回数で行うKey2:短期集中的に行うKey3:低侵襲に行う知識のアップデートとスキルアップで目指す、これからの歯周治療今月号掲載2018年10月号掲載予定マイクロバイオームを見据えた日常臨床を行えていますか? 細菌が歯周病の発症に主要な役割を果たすことは、歯科医療従事者の誰もが認識しています。細菌が存在しなければ、プラーク誘発性の疾患である歯周病は発症しません。では、われわれの日常臨床では、この細菌叢内の連携、すなわちマイクロバイオームの構造を理解し、施術による変化を認識してコントロールできているでしょうか? たとえば、保険診療では、施術時の菌血症を避けるべく、1回に行うSRPの本数に制限を設けています。複数回に渡り治療を進めるこの従来からのプロトコールは、マイクロバイオームを良好な方向へ導いているとは必ずしも言えないのではないでしょうか。 現在のわれわれの日常臨床における新しい考えとして、簡単に述べるとすれば、マイクロバイオームは「口腔などの特定な環境下での細菌、細菌の遺伝子と、その細菌どうしの相互作用の総称」となります1)。今回は、この「マイクロバイオーム」という存在と歯周病病因論を考慮しながら、歯科衛生士が目指すべき非外科的歯周治療について考えていきたいと思います。Illustration:タニグチコウイチ、飛田 敏1特 集歯科衛生士 September 2018 vol.4230

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