歯科衛生士 2018年9月
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あの情報源のエビデンスってなんだ  同じ立場や環境のなかで具体的な意見交換ができ、院内スタッフ間のプロフェッショナルなコミュニケーションが円滑になります。しかし、過去の記憶を正確に思い出すことは難しく、自分に都合の良いことばかりが記憶されやすいといわれているので、「思い出し情報」は、信憑性に欠けます。 また、症例にしても、数回の成功体験が強調され、成功しなかった症例は表に出ない傾向にあります。つまり、これだけではエビデンスに基づいた結論を導き出すのは難しいかもしれません。アドバイスは経験則が中心とはなりますが、前ページの図に示したように、臨床で得られた経験は、歯科衛生ケアプランの決定のためには有用となります。 一般的に私たちは肩書や権威のある人の言動に対し、無意識に信用し従ってしまう傾向があると言われています。セミナーに行き、「〇〇先生がこう言っていたし、有名△□DHさんはこうしていると言っていた。私も実践するぞ」、と意気込む方は多くいらっしゃいます。さまざまな知見を得られるセミナーや講演会、研修会に参加することは、自身の日常業務を振り返り、改善していくきっかけにもなるので積極的に参加したいものです。内容に触発されて、仕事へのモチベーションが高まることもスキルアップにつながります。 しかし、講演内容にはどうしてもバイアス(思考の偏り)があります。エビデンスを基にせず開催スポンサーの利益の代弁や、名人芸的治療結果の披露に終始している講演やセミナーも少なからずあります。発表者はどこに所属しているか、開催スポンサーはどこかなど、発表者や講演会の背景(利益相反)を確認することも大切です。 また、たとえ質の高い話を聞けたとしても、話の前後を理解できないまま、話の一片を抜き取って結論に結びつけてしまうと、以前受けたセミナーと整合性がつかず混乱してしまう危険性もあります。さらに、よく理解しないまま同僚などに伝えると、いつのまにかそれは「伝言ゲーム情報」となってしまい、まったく違った意味に置き換わって伝わってしまうこともあるので要注意です。PART1先輩・同僚のアドバイス1セミナー・講演会2 膨大な数の書籍や専門雑誌は重要な情報源です。ネットと比べると、フレッシュさに欠けますが、ネット以前、またはネットで消えてしまった情報などを含めた「保存版」的な情報源としては有効です。ただ、情報の質という点からいうと、一人または数名の著者からの情報なのでエビデンスレベルが高いとはいえません。歯科医療雑誌・書籍3歯科衛生士 September 2018 vol.4278

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