歯科衛生士 2018年11月
5/8

日常的な口腔ケアの効果を上げるには、歯科専門職のマネジメントがカギ  有友たかね 菊谷ら1)は、歯科専門職の評価にもとづく口腔衛生管理の効果を検証しました。介護保険施設入所者に対し、歯科による直接的な介入が行われた群、間接的な介入(介護職員による口腔ケアのマネジメント)が行われた群、介入なしの群を比較し、歯科による直接的な介入はもちろん、マネジメントのみでも優位に肺炎発症率が低下したと報告しています(図1)。歯科専門職のマネジメントによって日常的口腔ケアの質が担保されたことが、この差につながったと思われます。 これは施設のデータですが、他の環境下においても同様のことが起こると考えられます。在宅の現場においても、私たち歯科衛生士が日常的口腔ケアをマネジメントしていきましょう。私たち歯科衛生士がいない期間に、いかに口腔ケアの質を維持・継続させるかがキーポイントとなるでしょう。日々の生活がある中で“続けられるケア”をマネジメントする患者さんやご家族、かかわる職種の生活や習慣を受け入れたうえで、“提案”する姿勢で伝えましょう。A日常的に口腔ケアをしてくれる人に、どのように指導すればよいの?Q20単純に「私たちの代わり」と考えていませんか 十時久子 私たち歯科衛生士が訪問できるのは、週1回程度です。生活の大半の口腔ケアは、患者さん自身や、ご家族や患者さんにかかわる他職種に行っていただくことになります。本人への指導は先月の通りですが、ご家族や他職種などへの指導・提案はどのようにすればよいのでしょうか。私たちが行っているケアをそのまま全部お願いしてもよいのでしょうか?「ここは歯間ブラシのMサイズで、こっちはSSサイズ、ここは1本ブラシ、他の部分はこれを使ってケアしてください」 これは、実際にあるご家族が訪問した歯科衛生士から言われた言葉です。慣れない介護、時間に追われる毎日……家族のためにやってあげたいという思いはある。でもやることは山ほどあるし、時間がない。そんな中、熱心な歯科衛生士にそう言われたご家族は、「もうお手上げ……」と思ったと、後から伺いました。汚れが残っていることも、歯肉から出血す図1 歯科による口腔ケア介入度による肺炎発症率の違い歯科医師または歯科衛生士の評価にもとづく口腔ケア・マネジメントおよび歯科衛生士による週1回の専門的口腔ケアを組みあわせた実施群(1)と、介護施設職員による口腔ケアのみを行った群(3)を比較した。その結果、3群間に肺炎の発症率の差が認められた。DrまたはDHの評価にもとづく口腔ケア・マネジメントありありなしDHによる専門的な口腔ケア(週1回)ありなしなしDHによる介護施設職員の日常的口腔ケアへの指導ありありなし1歯科専門職による介入群A2歯科専門職による介入群B3介護施設職員による口腔ケア群肺炎の発症率(%)03.6%*12.8%*25.0%*(文献1より引用改変)*P<0.05203010〈引用文献〉1.菊谷 武, 福井智子, 高橋賢晃, 吉田光由, 田村文誉.介護施設における歯科衛生士介入の効果.口腔リハビリ誌 2011;24:65-70.有友たかね 歯科衛生士十時久子 歯科衛生士歯科衛生士 November 2018 vol.4250

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る