歯科衛生士 2018年12月
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全身感染症を防ぐために、低下した自浄作用を口腔ケアで補う必要があります。A患者さんが口から食べられなくなったら、訪問しなくていいの?Q21口から食べられなくなったらどのように栄養を摂るのか 在宅療養生活をしている患者さんも、訪問している私たちも、いつかは食べられなくなる時期がやってきます。医療用語では、口から食べることを「経口摂取」と言い、食べられなくなった状態を「非経口摂取」と言います。非経口摂取の原因のひとつとして嚥下障害が考えられますが、その主な問題点として、栄養摂取障害と誤嚥性肺炎が挙げられます。 非経口摂取になると、条件に合わせた代替栄養療法が検討されます。代替栄養療法には、点滴による静脈栄養法のほか、経腸栄養法があり、経腸栄養法には鼻からチューブを入れ直接胃に栄養を入れる「経鼻胃管」(図1)や、胃や腸に栄養を取るための入口を作り栄養を注入する「胃ろう(図2)・腸ろう」などがあります。「食べる」を支えてきた私たちの口腔衛生管理ですが、非経口摂取の患者さんにはどのように対応すべきでしょうか?非経口摂取になると口の動きが少なくなり、口腔機能がさらに低下する まず、非経口摂取になった患者さんの口腔がどのような状経口摂取ができていたときとの口腔ケアの違い有友たかね 歯科衛生士態になるか想像してみましょう。私たちの普段の日常生活を振り返ってください。会話をしたり、コーヒーを飲んだり、ご飯を食べたり、時には大きな声で笑ったりと、たくさん口を動かして生活しています。ところが、非経口摂取になった途端に口の動きは少なくなります。「食べる」動作をしなくなることで、唾液よりも大きな食塊を飲み込むことがなくなります。これでは、もともと存在していた口腔機能の低下に加えて、嚥下機能まで低下していきそうだということが想像できます。口腔機能の低下のいちばんの問題点は、自浄作用が低下すること 口腔機能が低下すると、口腔にさまざまな問題が出てきます。口唇や頬、舌の力が弱くなると、自浄作用が低下します。また、加齢にともない唾液分泌量が減少することはご存じのとおりですが、口腔機能の低下でも同様に唾液分泌量は減少します。すると、口腔乾燥が顕著となり、より自浄作用が低下するため、口腔内が不潔になりやすくなります。経管栄養が長期になる場合は、ろう孔を造設する手術を行い、ろう孔を通して胃や腸にチューブを留置し、栄養剤を注入する。鼻からチューブを挿入して、胃や腸にチューブの先端を留置する。特別な手術は必要ないが、チューブの先端がきちんと目的の場所(胃や腸)に届いていることが重要。図2 胃ろう図1 経鼻胃管歯科衛生士 December 2018 vol.4256

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