歯科衛生士 2018年12月
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非経口摂取患者さんへの口腔ケアのポイント1ブロック磨いたら、スポンジブラシや拭き取りシートですぐに拭き取る使用した清掃器具は適宜ふるい洗いする吸引器があれば口腔内の唾液を吸引するターゲットはバイオフィルム+遊離細菌 自浄作用の低下している非経口摂取の患者さんに対する口腔ケアでは、歯や歯肉に付着する付着細菌(バイオフィルム)だけでなく、唾液中や、舌や頬粘膜などの口腔粘膜に付着する遊離細菌もターゲットとし、口腔を清潔にしなくてはなりません。 遊離細菌は、口腔内を1ブロック磨いたら、スポンジブラシや拭き取りシート(図3)ですぐ拭き取ります。スポンジブ 唾液中などを遊離している細菌(遊離細菌)は、糖を代謝して多糖体の粘着性の物質を菌体外に排出し、バイオフィルムという形で粘膜や歯の表面に付着します。バイオフィルムには薬剤が浸透しづらいため、バイオフィルム内の細菌は活発化し大きく成熟していきます。やがて、細菌はバイオフィルム内部から菌体を放出し、その菌体が新たなバイオフィルムを形成するということを繰り返しながら、歯や粘膜表面などで繁殖していくのです。周知のとおり、バイオフィルムを除去するには、「擦過する」「機械的歯面清掃」が第一選択に考えられますが、会話や咀嚼といった機能によってもバイオフィルムが破壊されると言われています1)。 一方、遊離細菌はバイオフィルムに守られることがないため、含嗽薬の薬剤効果が期待でき、唾液を吐き出したり嚥下したりすることで比較的簡単に除去できる状態です。遊離細菌は、唾液とともに、食事中には食物と一緒に嚥下され、胃に送りこまれたときには平常時pH1という強酸性環境で殺菌されます。健常成人においては、唾液が1日に約1.5L分泌されて口腔内はつねに洗い流され、さらに嚥下運動は1日約600回も行われており、少しずつ分泌された唾液を自然と飲み込んで口腔内の残渣や細菌を胃で殺菌して保清しているのです。 この生体のシステムこそが自浄作用であり、口腔の保清、特に口腔粘膜の保清に重要な役割を果たしています4)。人体のシステムに組み込まれた自浄作用歯科衛生士有友たかねPICK UP!ラシやシートを持った方の手首を半回転させるイメージで動かすと、奥から手前へからめとることができます。舌や頬粘膜、歯肉をまんべんなく拭き取ることが大切です。 非経口摂取の患者さんは、嚥下障害が生じているため、含嗽が困難な場合が多いです。含嗽の代わりに清掃用具に付着した細菌を口腔外へ排出するために、歯ブラシなどの清掃用具は適宜ふるい洗いします。吸引器があれば、口腔内の唾液を吸引するのもよいでしょう。図3 遊離細菌を除去するための清掃器具例aスポンジブラシ。スポンジ部分の形や大きさが異なる。口腔に合わせてスポンジ部分の大きさを選ぶことができる。b口腔内を拭き取るシートタイプ。開口に協力的な場合や無歯顎の場合は簡便に広い面で拭き取れる。ab57歯科衛生士 December 2018 vol.42

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