歯科衛生士 2018年12月
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ここで差がつく外科処置のフォーハンドテクニック術者の手技を支える細やかな配慮 可動粘膜歯肉はたるみができやすいので、術者は予定していた切開線の設定がくずれないよう慎重に行います。ここでの一歩先の排除は、口唇や頬粘膜を排除すると同時にプローブなどを用い、切開線の延長上の粘膜を動かないように、根尖方向に引き抑えることで、たるみをなくし、ブレのないシャープなラインが描きやすくなります(図3)。また、縫合時にも同方法を用いることできれいな閉鎖が行えます。 歯肉弁の挫滅を防ぐには、ピンセットでの保持は必要最小限にとどめ、場面に適したインスツルメントを用います。剥離中にはプローブなどを用い、剥離できている範囲を術者が確認しやすいよう歯肉弁を浮かすように持ち上げます(次ページ図5)。剥離後はピンセットの先を歯槽骨に当 長時間の手術でつねにサクションを使用していると、口腔内が乾燥し、乾いた血液のこびりつきで術野が見えにくくなってしまいます。術野が明瞭であるからこそ、繊細な手技が行え、小さな見落としが防げるのです。 そこで、サクションに頼らない血液の排除法として、生食ガーゼを使用します。具体的には、メスの動きを追いかけるように、サクションで血液を吸引し、その後生食ガーゼで軽く圧迫することで、出血量を抑えることができます。また、術者がメスを口腔内から外した数秒の間に、新たな生食ガーゼで洗浄・清拭・圧迫止血を再度同時に行うことで、血液による術野の阻害は減少します(図4)。図3 可動粘膜歯肉の切開口腔前提の基底部をプローブの側面で粘膜に張りを持たせるように抑える。図4 止血のコツ21には歯肉溝内切開、2から遠心にかけて歯槽頂切開を行っているが、術野は血液による阻害を起こすことなく保たれている。て、歯肉弁が術野を阻害しないようにします(次ページ図7b)。また、範囲が大きい場合や臼歯部に対してはペリオスチールなども活用します。上顎前歯の広範囲の歯肉弁は剥離内部に折り込んでおきます(次ページ図6)。生食ガーゼで血液の清拭と圧迫止血を行う2Let’s Try!歯肉弁は場面に適したインスツルメントで排除する1Let’s Try!粘膜をたるませない1Let’s Try!切開線DrDr 「歯肉弁は脆く、儚く、繊細で、壊れやすい」。このくらい大げさな気持ちで歯肉弁を取り扱いましょう。歯肉弁を押さえつぶさない、吸い続けない。ここが創傷治癒に影響を及ぼすアシスタントワーク最大のポイントです。剥離後のアシスタントワーク歯肉弁へのダメージを最小限にStep3DH73歯科衛生士 December 2018 vol.42

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