歯科衛生士 2019年1月
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 う蝕や歯周病などは、「むし歯の洪水」と言われた時代を経て、近年は治療から予防の対象へとシフトしてきました。しかし、フレイルや不正咬合に関しての「予防」は、まだまだこれからのように感じます。 高齢期では、口腔機能の低下が、低栄養・体力の低下・ADL(日常生活動作)やQOLの低下・誤嚥性肺炎の発症などに影響1)し、それが身体機能の低下へと連鎖して自立を困難にしていきます。そのため、歯科には口腔機能の維持・向上を図るための介入が求められるとともに、高齢期の機能低下の予防として、特に乳幼児期・学齢期における口腔機能の獲得・成長発育を図るための介入が重要視されています(図1、表1)2)。図1 加齢による口腔機能の変化のイメージ表1 歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)厚生労働省・中央社会保険医療協議会総会が作成したものを一部改変。「第12条第1項の規定に基づく基本的事項」には口腔機能支援の重要性が記されている。はじめに歯科で“口腔機能”の指導 社会から歯科に求められる「自立支援」としての、口腔機能への介入高齢期(機能維持・向上)および発育期(機能獲得)の両方で口腔機能の支援が必要。口腔機能乳幼児期・学齢期成人期高齢期乳幼児期・学齢期に適切な口腔機能(咀嚼機能等)を獲得し、成人期に至った後、加齢にともない(機能)低下していくイメージ乳幼児期・学齢期に、歯科疾患や口腔機能の成長発育の遅れ等を生じ、 歯科医療による介入が行われないイメージ高齢期に、歯科疾患や全身疾患にともなう口腔(内)症状(合併症)等を生じ、歯科医療による介入が行われないイメージ口腔機能の維持・向上(回復)を図るための歯科医療による介入第一 歯科口腔保健の推進のための基本的な方針三 生活の質の向上に向けた口腔機能の維持・向上食べる喜び、話す楽しみ等のQOL(生活の質)の向上を図るためには、口腔機能の維持・向上が重要である。高齢期においては摂食・嚥下等の口腔機能が低下しやすいため、これを防ぐためには、特に、乳幼児期から学齢期にかけては、良好な口腔・顎・顔面の成長発育及び適切な口腔機能の獲得が、成人期から高齢期にかけては口腔機能の維持・向上を図っていくことが重要である。口腔機能の獲得、成長発育を図るための歯科医療による介入(一部省略)歯科衛生士 January 2019 vol.4340

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