歯科衛生士 2019年1月
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 こうした咀嚼、嚥下のほか、口呼吸、舌癖、発音などの機能を含めた小児の口腔機能発達不全に関する話題は、最近よく取り上げられています。そんななか、平成30年度の歯科診療報酬改定で、「口腔機能発達不全症」という疾患名がつけられ(表2)7)、15歳未満では「歯科疾患管理料 小児口腔機能管理加算」が新設されました。口腔機能発達不全症が、新生児・乳児における哺乳期・離乳期を経て食べる機能を獲得するプロセスや、口腔器官が果たす機能(口唇閉鎖・舌運動・軟口蓋挙上)とつながっていることはもはや周知のところです。そしていま、そのような早期から、どのように歯科が介入して支援・連携していくかというのが、まさに臨床現場の課題となっているのです。 小児の口腔機能に関しては、およそ30年ほど前、「噛めない子」「噛まない子」「じょうずに飲み込めない子」といった摂食機能の発達不足を疑う報告がなされ、小児保健や中学校の教科書にも掲載されました3)。近年も、子どもの食べ方について保護者が悩みを持っていることが報告されています*1。もっとも多い主訴は「噛まない・丸のみ」で、「ためこみ、飲みこまない」「時間がかかる」「好き嫌いが多い」など多様な悩みが寄せられました4)。なかでも、「よく噛まない」「偏食する」「早食い」といった悩みは、1985年から2005年の20年間でおよそ2倍にまで達しています(厚生省乳幼児栄養調査、複数回答)。 特に、乳幼児にとって「食」は生活の中心ともいえる営みです。それは、栄養や口腔機能を獲得する機会であると同時に、親子の愛着の形成など、心理的な発達の基盤でもあります5)。2005年には食育基本法が制定されましたが、食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てようとする「食育」の考え6)を借りれば、食事を通して多くのことを学ぶ機会となる食は、予防医療の土台にもつながっています。 こうした観点からも、口腔機能の獲得、成長発育を図るために、歯科が適切なポイントで介入できるかどうかが、子どもたちの未来に大きく影響を及ぼしてしまうと考えます。「口腔機能発達不全症」という新たな疾患名が生まれるなど、口腔機能への注目が高まっています。なぜ歯科でその対応が求められるのでしょうか?表2 口腔機能発達不全症とは(平成30年3月 日本歯科医学会) を行う時代に保険収載された「口腔機能発達不全症」次ページから、口腔機能の発達について解説していきます。「食べる」ことがますます重要視されるように*1 平成24年度新宿区歯科検診事業報告において、第1子の1歳児の約7割と2歳児の約6割に、食べ方についての不安があるという報告がなされた。●病態 :「食べる機能」、「話す機能」、その他の機能が十分に発達していないか、正常に機能獲得ができておらず、 明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態。 ●病状 : 咀嚼や嚥下がうまくできない、構音の異常、口呼吸などが認められる。患者には自覚症状があまりない場合が多い。歯科医院だからスムーズ! 日常生活につなげる つのチャンス口腔機能発達支援乳児からの541歯科衛生士 January 2019 vol.43

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