歯科衛生士 2019年1月
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時代が変われば常識も変わる21世紀の続歯肉縁上と縁下のバイオフィルムの性格は異なる まず、基本知識を確認しましょう。歯肉縁上と縁下のバイオフィルムに棲む菌はまったく異なる性格を持っています。う蝕を発症させる歯肉縁上バイオフィルム細菌の特徴としては、好気性(酸素が好き)、酸性が好き、砂糖と炭水化物が主食、ということが挙げられます。一方、歯周病を起こす歯肉縁下バイオフィルム細菌は、嫌気性(酸素が嫌い)、アルカリ性が好き、タンパク質由来のアミノ酸が主食なのです(両方の性格を持つ菌種もいますが、そういう中途半端な菌は中途半端な病原性しかもっていませんから今は話題にしません)。歯肉縁は2つの細菌世界を隔てる国境です。むし歯菌は縁上の住民。歯周病菌は縁下に棲んでいます。歯肉縁を境に異なる細菌世界歯肉縁上と縁下のバイオフィルムに棲む菌はまったく異なる性格をもっている。歯肉縁上バイオフィルム1う蝕を起こす2好気性菌、酸を出す3弱酸性環境4糖質(砂糖、炭水化物)を摂取歯肉縁下バイオフィルム1歯周病を起こす2嫌気性菌、炎症を起こす3弱アルカリ性環境4アミノ酸(タンパク質)を摂取 バイオフィルムの病原性を決める大きなポイントは、どんな細菌種がいるか(悪玉菌か善玉菌か)、細菌種の数は多いか少ないか、バイオフィルム細菌が栄養を取っているか(歯周ポケットが炎症を起こしているかどうか)、の3つです。代表的な悪玉菌がいて、数百を超えるほどの多くの細菌種がいても、細菌に栄養が与えられない時は未病(発病には至らないものの発病原因となるものが存在する状態)といえます。この未病の状態から「均衡崩壊」によって歯周病の発症へと向かうロードマップについてお話しします。59歯科衛生士 January 2019 vol.43

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