歯科衛生士 2019年3月
7/8

健康な歯周組織をつくるタンパク質・ビタミン・ミネラルの不足古川慎哉 医師塚越芳子 歯科衛生士タンパク質 タンパク質は、筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの身体を構成し、ホルモン・酵素・抗体などの身体を調節する機能をもつ重要な栄養素で、種類がたくさんあります。コラーゲンもタンパク質の1つです。 タンパク質の摂取量が少ないと、筋肉の合成が抑制され、同時に筋肉分解が促進されるため、全身の筋肉量が低下してしまいます。さらに断食や偏食などによって極端に摂取量が低下すると、筋肉がいっそう分解されて基礎代謝量も低下します。その結果、太りやすくなり、血糖も上昇しやすくなります。ミネラル 鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガンなどがミネラルとされています。ミネラルも体内ではほとんど合成することができないため、食物から摂取する必要があります。 鉄や銅が欠乏すると、貧血になることが広く知られています。貧血では、全身へ十分な酸素を送ることができず、動悸、息切れ、ふらつき、頭痛などの症状が出現することがあります。また、亜鉛は味覚に関連するため、不足すると食品の味を感じにくくなり、味覚障害を引き起こします。 ただし、鉄の過剰摂取では肝障害、ヨウ素の過剰摂取では甲状腺機能低下症が発症することから、ミネラルは適切な摂取が重要です。ビタミン ビタミンは、身体の機能を正常に保つために必要な栄養素で、全身の細胞の再生やエネルギー代謝のためにはたらきます。体内ではほとんど合成することができないため、食物から摂取する必要があります。 ビタミンが欠乏すると、全身に多様な症状が起こります。ビタミンA欠乏では視力の低下、ビタミンD欠乏では骨の形成が低下します。また、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)が欠乏すると、口内炎などの皮膚症状に加えて、認知機能の低下をともなった意識障害や神経炎なども起こります。エネルギーのもとになるもの 油脂・種実   穀類・いも・砂糖体の調子を整えるもの 淡色野菜・果物   緑黄色野菜体をつくるもとになるもの 魚・肉・卵・豆 牛乳・小魚・海藻炭水化物タンパク質カロテン脂質ビタミンCミネラル(無機質)古川慎哉 医師塚越芳子 歯科衛生士食事記録で注目するポイントまず、筆者が患者さんの食事記録を読む際に注目しているポイントについて、内科医の先生とともに解説します。 歯周組織を組成している主な成分はコラーゲンです。コラーゲンは、栄養素でいうとタンパク質の1つに分類され、健康な歯周組織をつくる大切な栄養素だと考えられます。また、タンパク質の代謝、吸収に必要な栄養素のひとつがビタミンB群です。さらに、歯周組織にはたくさんの血管が走行していますから、血液中のヘモグロビンの主成分である鉄も、健康な歯周組織をつくる大切な要素だと考えら健康な歯周組織をつくるためには栄養も不可欠DH's EYE塚越れます。 しかし、筆者がこれまで食事記録をつけていただいた、歯周病やう蝕に悩む患者さんの多くは、肉、魚、豆、卵などのタンパク質が不足してしまい、炭水化物(糖質)*過多の傾向にありました。糖質を過剰に摂取するとビタミンB群の消費が多くなるといわれているため、歯周組織をつくるタンパク質の維持に影響が出ると筆者は考えています。*糖質は、厳密にいえば炭水化物から食物繊維を除いたものを指すが、一般的に炭水化物と同じ意味合いとして扱われることから、本稿においても同様に扱う。79歯科衛生士 March 2019 vol.43

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る