歯科衛生士 2019年3月
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あの大人気連載が満を持して帰ってきました! 歯周病について新たに明らかになってきた情報について、Dr.天野がわかりやすく解説していきます。時代が変われば常識も変わる21世紀の続天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学分野教授・歯科医師Illustration:寺田久美 1960年頃、歯周病の原因は歯石ではなく、生きた細菌の塊であるバイオフィルムであることがわかりました。しかし、当時はバイオフィルムを構成する細菌種(悪玉菌、善玉菌、日和見菌)の判別まではできませんでした。そのため、バイオフィルムにどんな細菌がいるかという質よりもバイオフィルムの量が問題にされました1)。 そこで始まったのが「100%磨き」の指導です。プラーク染色の後、「ほら真っ赤でしょ、歯垢を100%落としましょう!」というブラッシング指導です。昭和のブラッシング指導はプラークコントロールレコード(Plaque Control Record:PCR)を低くする、つまりバイオフィルムを徹底的に取り除くことを目的としたものでした。連載第1回・第2回でもご紹介したとおり、バイオフィルムの菌叢と病原性には個人差があるにもかかわらず、それとは無関係にすべての人に「ていねいに磨くように」と一律に指導していたわけです。 今でも100%磨きの指導を実践している歯科衛生士さんはいます。彼女たちの最大の使命は「バイオフィルムを完全に除去する!」です。使命感に燃える彼女たちは自分をバイオフィルムに立ち向かう正義の味方であると信じ、患者さんに知っている限りのことを伝え、できる限りのことをしてもらおうと指導します。しかし、「誰に対しても同じ指導」「『がんばって磨いてください』が決まり文句」ということに少し疑問をもっていただきたいと思います。昭和のブラッシング指導は完璧主義1第3回バイオフィルムの病原性を見分ける口腔の健康を維持するためには、日々のセルフケアが重要であることは間違いありません。しかし、そのブラッシング指導はすべての人に対して同じ内容でいいのでしょうか。今回はこの解決策として、バイオフィルムの病原性をふまえたブラッシング指導についてご紹介します。「100%磨き」だけで本当にいいのか?歯と歯の間を中心に赤く染まっていますね。これを全部落とせるようにがんばりましょう!65歯科衛生士 March 2019 vol.43

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