歯科衛生士 2019年4月
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サブカルテの記録が大事なワケは?サブカルテが単なる業務記録になっていませんか? 何のためにあり、何に役立つのか、まずは考えてみましょう。藤木省三 大西歯科・歯科医師 職種によって患者さんとの接し方は異なり、得られる情報もそれぞれ異なると考えます。歯周治療を例に考えてみましょう。初診時に問診(医療面接)や口腔内写真撮影、エックス線写真撮影、歯周精密検査などを行いますが、患 サブカルテは、本カルテだけでは足りない患者情報を書き残すためのツールです。なかでも、病態の経過の記録は診療を進めるうえで、とても重要な情報となっていきます。 歯周治療は、う窩の修復処置などと異なり経過を追うことが重要です。たとえば、当院のサブカルテには、SRP時の歯石のようすや歯周ポケットの広がりや形態、術後の疼痛、知覚過敏、ホームケアの変化を歯科衛生士が細かく記録しています(図1)。 このような記録が本当の意味で役立つのは数年が経過した時です。すべてのケースが順調にいかないのが臨床です。者さんと接する時間が長く、距離感も近い歯科衛生士でなければ得られない情報はたくさんあります。エックス線写真からはわからない歯周ポケットのようす、炎症の程度、歯石の量や性状も歯科衛生士による緻密な歯周精密検査かこの対応によりどう変化したか、なぜよい結果が得られなかったかを振り返り考えるためには、このようなサブカルテの記録が不可欠です。 私たちが毎日行っている、う蝕治療や歯周治療の考え方が過去とすっかり変わってしまったことは皆さんすでにご存じだと思います。う蝕治療は、う窩の修復ではなく脱灰と再石灰化のバランスの改善、歯周治療は失われた組織の回復ではなく歯周組織(生体)とバイオフィルム(細菌)とのバランスの改善です。 つまり、治療方針を決めて進めていくにあたっては、単に病状の進行の程度だけではなく、患者さんの希望や性格、セルフケア、飲食習慣、喫煙歴、疾患、ストレス、感受性など患者さん個々の状態にも考慮が必要なのです。それには、患者さんの情報を知り得る歯科衛生士、歯科医師、さらには歯科助手や受付などスタッフ全員と情報を共有し、院内で得られたすべての情報を重ね合わせて判断していく必要があります。 このように、現在は、歯科医師中心の歯科治療ではなく、全スタッフで協力する「チーム医療」の時代です。チームで行う歯科治療ではスタッフ全員で一人ひとりの患者情報を共有していなければ成功しないのです。歯科診療は歯科医師中心からチーム医療の時代に職種が異なれば共有する情報も異なる記録は経過を追うのに役立つ図1 歯科衛生士による記録診療中に得た記録のほか、今までの経験をふまえた予後を書くこともある。歯科衛生士 April 2019 vol.4322

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