歯科衛生士 2019年4月
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症例をシェアして、ステップアップ!Case25はじめに―信頼関係の構築に心理学を生かす― いきなりですが、読者のみなさんは患者さんとのコミュニケーションに悩んだことはありませんか? 歯科衛生士になりたての方は悩むことも多いのではないでしょうか。 筆者は、「相手の気持ちに寄り添って仕事をしていきたい」という思いから、大学では心理学を学びました。歯科衛生士資格取得後は、心理学で学んだことを生かしながら患者さんとコミュニケーションを取っています。 今回は、「全部の歯を抜いてもいい!」と衝撃的なことをおっしゃった“頑固者”の患者さんに心理学を応用して信頼関係を築いた症例をご紹介します。「抜歯で構わない」という歯周炎患者さん 患者さんは右上の疼痛を主訴とする53歳男性(表1)。淡々としていて無表情ながら、第一声が衝撃的でした。「全部の歯を抜いて入れ歯でもいい。とにかく右上の痛みをなくしてほしい」。  検査の結果、中等度広汎型慢性歯周炎と診断され1)、₆に関しても歯髄壊死・壊疽と診断されました(次ページ図1~4)。患者さんはとにかく歯に対して無関心で、「余計な話はいらない」といった雰囲気を醸し出しており、まったく心を開いてもらえる気配がありません。医療面接していくうえで、通常のアプローチをしていたのではこの患者さんの心は掴めないと感じると同時に、もしこのまま患者さんの希望だけを叶えてしまえば、口腔内は崩壊の一途を辿り、実際に多くの歯を失ってしまったときに患者さんが後悔するだろうと思いました。 時間をかけて意識を改善させていくために、まずは口数の少ない患者さんの言頑固な無関心期の患者さんに対する心理学的アプローチ[キーワード] 無関心期、心理学、アプローチ●29歳●2012年立正大学心理学部臨床心理学科卒業、2015年北原学院歯科衛生専門学校卒業●歯科衛生士歴:5年目●勤務形態:常勤●勤務先:全顎的な視点から情報収集・診査診断を行い、包括的な治療により炎症と力のコントロールを行う歯科医院。本吉ひとみさんHitomi Motoyoshi医療法人社団ウケデンタルオフィス[東京都]歯科衛生士日本臨床歯科医学会会員日本歯周病学会会員NDL mint-seminarクリニカルベーシックハイジニスト今回症例を紹介してくれるのは……表1 患者さんの基本情報年齢・性別53歳、男性(初診日:2016年9月)職業自営業(会社社長)主訴噛むと上顎の左右が痛む歯科病歴ブラキシズム病歴健康、6年前まで喫煙(20本/日)、胃潰瘍 治療への希望全部抜いて入れ歯でもよい、とにかく痛みをなくしたい自身の口腔に関心が低く、必要最低限の身だしなみとして歯を磨く程度だった。95歯科衛生士 April 2019 vol.43

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