歯科衛生士 2019年6月
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あの大人気連載が満を持して帰ってきました! 歯周病について新たに明らかになってきた情報について、Dr.天野がわかりやすく解説していきます。時代が変われば常識も変わる21世紀の続天野敦雄Atsuo AMANO大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座予防歯科学分野教授・歯科医師Illustration:寺田久美 これは、今まで連載でお伝えしてきたことです。キーワードはmicrobial shift。microbial shiftとはバイオフィルムが低病原性から高病原性に変わることです(連載第1回P.62参照)。microbial shiftの最大の原因は歯周ポケットからの出血です。バイオフィルムの細菌叢にレッドコンプレックスがいると、microbial shiftが起こりやすくなるだけではなく、より病原性の高いバイオフィルムに変わります。なんだかんだ言ってもレッドコンプレックス(特にP.g.菌)は悪い奴です。細菌検査、歯周基本治療への反応性観察(連載第3回参照)によって、バイオフィルムの病原性を把握してください。バイオフィルムの病原性1第6回(最終回)輝く歯科衛生士になるための科学早いもので、この連載も今月で最終回になりました。そこで今回は、「なぜ歯周病になるのか?」のバイオロジーを総まとめします。歯周病発症の要因は大きく3つ、バイオフィルム、体質(疾患感受性)、生活習慣です。21世紀のキーワード“Microbial shift”バイオフィルムの病原性が高くなるのは、常在菌のmicrobial shiftによる(新たな細菌種の参入によるものではない)。microbial shiftとはバイオフィルム周囲の環境変化(栄養、温度、pH、嫌気度など)によって、細菌たちが活気づき病原性を高める現象のこと。バイオフィルムが「安定」から「不安定」にシフトし高病原化する。microbial shiftによりバイオフィルムと歯周組織の間の均衡が崩れ、歯周病が発症・進行する(連載第1回P.58参照)。レッドコンプレックス安定菌叢(低病原性)不安定菌叢(高病原性)バイオフィルム細菌への栄養の増加●バイオフィルム細菌の栄養共生●歯周ポケットの出血歯周ポケット内環境の変化●快適な温度●適度な嫌気度(低酸素)●適度なアルカリ性レッドコンプレックス歯科衛生士 June 2019 vol.4364

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