歯科衛生士 2019年6月
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時代が変われば常識も変わる21世紀の続歯周病になりやすい体質(疾患感受性)2過剰な免疫反応 風邪を引いて高熱を出す人、虫に刺されてひどく腫れる人など、免疫による炎症反応の程度は人それぞれです。同じバイオフィルム感染に対して、歯周組織が過剰な免疫反応(強い炎症や骨吸収)を起こす人はそうでない人よりも歯周病が進みやすいのです(これを「歯周病に対する感受性が高い」と表現します)。私たちの体の免疫にはブレーキ制御メカニズムが備わっているのですが、このブレーキが十分はたらかないと過剰な免疫反応が起こると考えられています(全貌はまだわかっていません)。30歳代半ばで明らかに歯槽骨が吸収している病態は、バイオフィルムの高病原性に過剰な免疫反応が加わった進行性の歯周病と考えられます。進行性の歯周病 私たちは、日常の臨床で「進行度が軽度の、中等度の、重度の歯周病(歯周炎)」という表現を使います。でも、日本歯周病学会の歯周病分類にそんな診断名はありません。歯周炎は慢性歯周炎と侵襲性歯周炎、それに先天性の遺伝疾患にともなう歯周炎の3種類だけです。ところが、2018年のヨーロッパ歯周病学会で新しい歯周病分類が提唱されました。この分類では、侵襲性歯周炎が慢性歯周炎に包括されました。 侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の臨床所見は明らかに違います。それなのに、なぜ侵襲性歯周炎という診断名はなくなったのか。それは、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の原因に明らかな違いがないからです。実は、本誌2017年1月号の特集記事でこの事実を皆さんにお知らせしました1)。その記事には「侵襲性歯周炎の原因はよくわからない。特に、日本人の侵襲性歯周炎は慢性歯周炎の原因と同じである可能性が高い」と書いてあります。これが侵襲性歯周炎という診断名が消えた理由です。これからは、侵襲性歯周炎の病態を示す歯周炎は、「疾患感受性が大きく影響している慢性歯周炎」と考えることになります。現在の侵襲性歯周炎の原因論●臨床的にはどれも均一に近い病態を示すが、実はさまざまな異なる原因によって発症する●発症原因は多様かつ複雑で、単純なものではない●プラークの病原性と宿主因子の均衡の崩壊につながる因子によって発症に至っていることは間違いない●特に、日本人の侵襲性歯周炎については、遺伝、生活習慣、レッドコンプレックス感染が発症の三大要因の可能性が高い一時期はA.a.菌が原因とする説もあったが、特に日本人の侵襲性歯周炎においては否定的になっている。(文献1より転載) 診断分類から消える侵襲性歯周炎歯周病分類(日本歯周病学会 2006年)新・歯周病分類(米・欧歯周病学会 2018年)【歯周炎】1. 慢性歯周炎2. 侵襲性歯周炎3. 遺伝疾患にともなう歯周炎【歯周炎】1.慢性歯周炎2.遺伝疾患にともなう歯周炎65歯科衛生士 June 2019 vol.43

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