歯科衛生士 2019年7月
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脱灰良好な口腔衛生MS菌、乳酸桿菌、乳酸桿菌、乳酸桿菌、ビフィズス菌ビズ菌(耐酸性細菌)S.oralis、SSanguinisS.SanguinisS.Sanguinis(非耐酸性細菌)ミネラルの純獲得(病変の回復/停止)歯面の特徴ナメル質ナメル質エナメル質:輝きがある、なめらか象牙質:輝きがある、硬い軽度/まれな酸性化中等度/頻繁な酸性化 仮説で変わる山田 翔Sho YAMADAたけのやま歯科[愛知県]院長・歯科医師Illustration:ハラアツシ「非特異的プラーク仮説」 「特異的プラーク仮説」 まず、う蝕の病因論の変遷を振り返ってみましょう。生態学的プラーク仮説が提唱される以前は、主に2つの説が考えられていました。 ひとつは、「非特異的プラーク仮説」です。プラークの量が多いほどう蝕が発生しやすいとする考え方で、う蝕の原因は特定の細菌の活動によるものではなく、プラーク全体のさまざまな菌の活動の結果によるものであるとする説です。 もうひとつは、「特異的プラーク仮説」です。う蝕の原因となる特定の細菌がいる、とする考え方で、ミュータンスレンサ球菌やラクトバシラス菌などを原因菌とする説です。今でもこの考え方でとらえている歯科関係者も多いのではないかと思います。 そもそもう蝕が「感染症」だと考えられたのは、1924年にクラーク(Clarke)がミュータンスレンサ球菌をう蝕病変から分離し、さらに1960年にフィッツジェラルド(Fitzgerald)とカイス(Keyes)が特定のレンサ球菌を感染させることでう蝕が誘発されることを示したことなどによります。 「感染症」に関する有名な条件に「コッホ(Koch)の条件」があります(表1)。う蝕とミュータンスレンサ球菌は、一見するとこれらの条件を満たしているようにも見えます。しかし、う蝕はミュータンスレンサ球菌が明確に存在していなくても発生することがあり1)、また、ミュータンスレンサ球菌が高いレベルで歯面に存在するにもかかわらず、う蝕が発生していないこともあることがわかっています1)。つまり、ミュータンスレンサ球菌という特定の菌の存在が必ずしもう蝕の発生と結びつくとは限らないということです。 ちなみに、上記に挙げたような、20世紀半ばに行われた実験は、無菌動物に1種類の菌株のみを感染させる方法がとられており、さまざまな菌が共生しているヒトの口腔内とは異なる状態であったことにも注意が必要です。プラークの量や、特定の細菌を原因とする考え方ミュータンスレンサ球菌の存在がう蝕の発生に結びつくとは限らない以前の病因論表1 コッホの条件●その菌が当該感染症患者(病巣)から分離される●その菌が他の疾患から検出されない●病巣から分離、培養された菌を実験動物に感染させると同一疾患が発生する19歯科衛生士 July 2019 vol.43

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