歯科衛生士 2019年7月
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初期段階で気づく 進行させないための観察ポイントTOPIC知識不足により酸蝕症を加速させてしまっていた……第三の疾患、tooth wear 当院が予防を基礎に据えた診療体制になり約20年が経過し、患者さんごとの検査のデータ、規格性のある資料を残すことがルーティンとなりました。これは、治療成果やメインテナンスの状況といった情報を患者さんにも詳しく提示することができるほか、歯の喪失原因となる2大疾患であるう蝕と歯周疾患への対応や治療経過などの確認を主な目的として始めたものでした。 数年、10数年と歯科衛生士が研鑽を積み、必要な知識や技術を身につけ、患者さんからの信頼を得られるようになると、長年通ってくださる方も増え、患者さんに長く寄り添う そのひとつとして、tooth wearがあります。tooth wearとは、細菌の関与なく歯質表層の損失(溶解)が起こることで、咬耗、摩耗、アブフラクション、酸蝕症が属します。近年、専門誌でも多く取り上げられるようになり、ようやく日本の歯科衛生士の間でも第三の歯科疾患として浸透しつつあるように思います。しかし、欧米ではすでに1990年代から研究が始まっていました。2008年には、本誌でも1年間にわたりtooth wearに関する連載が掲載されていました。長期症例写真を前に、貴重な情報が提供されていたにもかかわらず、それを活かせていなかった自分たちの未熟さを今痛感させられています。 私たちは、診療室でtooth wearを毎日頻繁に目にしているのです。高齢者の残存歯が増え続けている現在では、今後その機会が減ることはありません。ようになります。すると、歯科衛生士はより広い視野で細部に目を凝らし口腔内を観察しながら、患者さんの声に耳を傾け、確かな情報を得ようと心がけるようになってきました。 そのようなスタンスで、担当する長期症例の口腔内写真を見返してみると、健康な口腔を維持している患者さんがいる一方で、年齢とともに口腔内が大きく変遷している患者さんも少なくないことがわかります。これは、口腔の健康を維持するためには、筆者らが重視してきたう蝕や歯周病のコントロール以外にも、重要な因子があることを示していると考えました。う蝕と歯周疾患の予防だけでは守り切れないアブフラクション過剰な咬合力により歯肉縁付近にストレスが集中し生じる歯の崩壊。酸蝕細菌関与のない、酸性飲食物や胃酸などの酸による化学的な歯の溶解。摩耗歯以外の物理的な方法・手段による歯質が摩滅。咬耗歯と歯の接触による歯質の摩滅。代表的な所見歯科衛生士 July 2019 vol.4376

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