歯科衛生士 2019年10月
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Illustration:大野文彰口腔と全身疾患の関連性が次第に明らかになってきました。本コーナーでは、疾患ごとに、現在どこまで口腔との関連性が明らかにされているのか、問題とされていることはあるのか、さまざまなエビデンスを紹介しながら実態をつかみ、一緒に考えていきたいと思います。関野 愉Satoshi SEKINO日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座准教授・歯科医師第4回今月は、国内で死因第2位の心疾患について取り上げます。口腔環境がどのように影響するのか、みていきましょう。虚血性心疾患の基礎知識井上直人東京蒲田病院 [東京都] 理事長・医師 狭心症や心筋梗塞にかかりやすいのは生活習慣病がある人で、このような危険因子を持つ人は、冠動脈内にプラークという悪玉コレステロールの塊ができてしまいます。この塊で冠動脈が狭窄するのが狭心症です。プラークは火山のようなもので、ある日、プラークの中の脂が火山活動のように血管内に飛び出してきます。そこに、血液の塊(血栓)が形成され、それにより冠動脈が完全に詰まり、その先の心筋が壊死するのが心筋梗塞です。原因 虚血性心疾患は心臓に栄養を与える冠動脈に動脈硬化が生じる病気です。これによって心臓の筋肉が酸素不足になると狭心症発作が起こります。階段の昇り降りやスポーツで体を動かした時に、締め付けられるような胸の痛みを感じるのが典型的です。症状は狭心症の段階であれば2、3分で治まりますが、心筋梗塞まで至ると20分以上続きます。心筋梗塞では同時に重症な不整脈をともなうことも多く、自動体外式除細動器(AED)で蘇生されることもあります。一方、動脈硬化が進行しているにもかかわらず無症状(無症候性心筋虚血)の人もいるので注意が必要です。症状 2014年の心疾患の患者数は、172万9,000人であり、それによる年間死亡数は、19万6,926人で悪性新生物(がん)に次いで第2位の死亡原因となっています。また、虚血性心疾患の年間医療費は7,503億円に達し、その予防も極めて重要です。国内患者数 心筋梗塞の場合には、心筋への酸素供給が途絶し心筋壊死が急速に進行するので、ただちに冠動脈を再開通させることが重要です。そのため、われわれ循環器内科医はチームを組んで24時間体制で緊急のカテーテルを使用した血行再建術を施行しています。一方狭心症の場合には、カテーテル治療で恩恵を受けるのかどうかを十分に選別し、無駄な治療を避けることが必要です。近年では、ワイヤーで狭窄前後の圧較差を測定することによって治療の必要性を決定する、いわゆる心筋血流予備量比(FFR)が多く施行されています。  もちろん虚血性心疾患の治療には生活習慣の改善、薬物によるコレステロール低下療法などの総合的なケアが欠かせません。近年は炎症、感染症なども動脈硬化進行に関与していると指摘されています 。対応口腔心疾患63歯科衛生士 October 2019 vol.43

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